研究実績の概要 |
生殖細胞系譜の発生過程を試験管内で再構成することは,新規発生工学技術の開発や生殖細胞系列で起こる発生機序及びエピゲノム制御の解明に貢献する.所属研究室では,マウス胚性幹細胞や人工多能性幹細胞を用いて,精原幹細胞や卵子の前駆細胞となる始原生殖細胞様細胞 (Primordial germ cell-like cells; PGCLCs) を誘導する培養系を開発し,報告してきた.本研究ではその培養系を更に発展させ,精原幹細胞様細胞に誘導する新規培養系の確立を目指す. 本年度は,PGCLCsと生殖腺体細胞との再凝集により作製した「再構成精巣」を用いて,気液平衡培養法にて長期間培養を行い,PGCLC由来細胞から精原細胞マーカーの発現が検出される培養条件を検討した.形態観察や発現蛋白質の解析結果から,再構成精巣内でPGCLC由来細胞が,精原細胞に非常に近い細胞へと分化する培養条件を見いだした.更に,得られた再構成精巣細胞を,Germline Stem cells(GSCs)の培養条件にて培養を行った.GSCsは2003年に篠原教授らによって樹立が報告された精原幹細胞の長期培養株である(Kanatsu-Shinohara, M. et al, Biology of Reproduction, 2003).その結果, GSCsと形態的・増殖速度共に非常によく似た細胞株,精原幹細胞様細胞(Germline Stem cell-like cells; GSCLCs)を得ることが出来た.
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