本研究ではHead-up tilt testを対象とした血管力学モデルに基づく新たなパーキンソン病診断支援のための自律神経活動評価システムの開発を目的としている.本年度はこれまでに当研究員が提案した血管力学モデルから得られる血管力学特性の簡易推定法の検討,および起立試験時におけるパーキンソン病とパーキンソン症候群の血管力学特性変化の違いについて調査した.実験では,パーキンソン病患者15名とパーキンソン症候群患者10名に対して仰臥位10分,起立10分,再度仰臥位5分のHead-up tilt testを施し,手指尖部の血管力学特性を評価した.その結果,各被験者群間で体位変化に伴う血管剛性パラメータおよび指尖容積脈波振幅の変化率,体位変化中の血管剛性パラメータおよび指尖容積脈波振幅の変化速度の各特徴量を用いて,ニューラルネットワークによる解析を行なったところ,各被験者群間に有意な差があることを確認した.また,提案法を用いて自律神経機能治療法(光療法)を施したパーキンソン病患者の治療効果を評価できる可能性を示した.本研究により,パーキンソン病とパーキンソン症候群の鑑別だけでなく,パーキンソン病の自律神経機能異常度を評価できる可能性を示唆した.
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