今年度は、これまでに構築したパイプラインを水産養殖対象魚種であるブリ類に適用するため、ブリゲノム配列の解読、アセンブル、遺伝子同定を行った。イルミナ社シーケンサーより得た配列データをアセンブルした後、コンティグ配列と、ブリBAC末端配列、近縁種であるヒラマサRNA-Seq配列とを用いて、スキャッフォールディングを行った。得られたスキャッフォールドと、CEGMAパイプラインとを用いて、真核生物において広く保存されている遺伝子を抽出した後、それらをトレーニングデータとして、AUGUSTUSによる遺伝子予測を行った。最後に、これまでに構築されているブリ連鎖地図上にスキャッフォールド配列をマップし、ブリゲノム配列を得た。 以上で得られたゲノム配列は、性染色体がZ染色体の情報のみしか含まないため、W染色体のゲノム配列を決定すべく、ハイブリダイゼーションを基礎とする標的領域特異的塩基配列決定法の開発を試みた。既存のブリBACライブラリーより、性染色体状に整列化されたBACクローンを選別した。得られたBACクローンにビオチン化を施し、プローブとした。ブリWW個体より抽出した高分子ゲノムDNAを物理的に断片化し、末端にアダプターを付加したものをターゲットサンプルとし、ビオチン化プローブとのハイブリダイゼーションに供した。ハイブリダイゼーション産物を精製、増幅し、シーケンシングサンプルとした。シーケンシングはイルミナ社MiSeqとナノポア社MinIONシーケンサーにより行った。得られたシーケンスデータをアセンブリした結果、W染色体由来ゲノム配列を取得することに成功した。W染色体由来ゲノム配列と、Z染色体由来ゲノム配列との比較を行ったところ、大きな挿入・欠失・逆位は観察されなかった。
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