カリフォルニア州の「歴史-社会科学フレームワーク」が、2005年に公表された現行版からどのように改訂されるかを明らかにすることを目的として研究を進めてきた。2016年7月に公表された新フレームワークで重点が置かれているのは、読解力・記述力の養成を強調しているコモン・コア・ステーツ・スタンダードへの対応であると序文で述べられていた。コモン・コアに対応するために、学校区レベルでどのように対応しているか検討した。具体的には、ロサンゼルス統合学区に着目した。ロサンゼルス統合学区では、コモン・コアで要求される読解力・記述力を養成する歴史の授業に転換するために、スタンフォード大学歴史教育グループ(以下、SHEG)と協定を結び、SHEGが開発した「歴史家のように読む」というカリキュラムを学区内のすべての学校で実施することとしている。 「歴史家のように読む」の合衆国史は全72単元で構成されており、すべての単元には中心となる問いが設定されている。「情報源の確認」、「文脈化」、「実証」という3つの方法を用いて複数の史料を読み、史料を証拠として問いに対する答えを生徒に主張させるという授業展開になっている。史料読解の3つの方法については日本国内の先行研究でもかなり詳細に明らかにされているので、問いがどのようなものかと答えを主張させるための立場の取らせ方を分析した。問いは、人物・集団・政策などの評価、歴史的事象の原因・理由についてのものが大部分を占めていた。これに答えるための立場の取らせ方は、①授業で扱った史料が教科書の記述を反駁するか支持・拡張するか、②ある説や見方に対して賛成か反対か、③複数の説や歴史家の見解のうちどちらを支持するか、④ある歴史資料が実態を反映しているといえるか否か、⑤複数の歴史資料のうち、どれが最も実態を反映していると考えられるかを判断させるという5パターンがあった。
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