研究課題/領域番号 |
14J07050
|
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
関 亮平 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | 比較ゲノム / 四肢 / 形態形成 / 発生生物学 / 国際情報交換 / 中国 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、鳥類に特徴的な形質の原因となるゲノム配列およびその機能を明らかにすることである。これまでのGuojie Zhangら(BGI-Shenzhen、中国)との共同研究により、鳥類特異的な保存配列(avian specific highly conserved element, ASHCE)の大多数がnon-coding領域に存在すること、さらにそれらの近傍遺伝子の中に鳥類特異的な発現を示すものがあることを見出している。そこで当該年度は、ASHCEがエンハンサーとして標的遺伝子の鳥類特異的な発現をもたらしているという仮説を、以下の2つの側面から検証した。 1.ChIP-seqを用いたASHCEのエピゲノム解析 多くのASHCEがnon-coding領域に存在するものの、実際にこれらがエンハンサーとして機能しているかどうかは不明である。そこで、エンハンサーの指標となるヒストン修飾に着目し、ニワトリ胚から採集したクロマチンに対してChIP-seq解析をおこなった。その結果、全ASHCEの約27%が何らかのエンハンサーマークをもつことが明らかとなった。 2.ニワトリ胚およびマウス胚を用いたASHCEのレポーターアッセイ ASHCEの近傍に存在し、鳥類特異的な発現を示す遺伝子の中でも、Sim1は前肢芽の風切り羽の形成領域に発現するという点で特に興味深いものであった。そこで、Sim1近傍のASHCEがエンハンサーとして機能するかどうかを、ニワトリ胚およびマウス胚を用いたレポーターアッセイにより検証した。いずれの場合でも、ニワトリでの発現を模倣するようなレポーターシグナルが観察された。以上の解析結果から、Sim1近傍のASHCEがエンハンサーとしての機能をもつことに加え、このエンハンサーの活性化に十分なトランス因子群がマウス胚においても存在することが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画と比べると解析手法に関して若干の変更はあったものの、in situ hybridizationによる候補遺伝子のスクリーニング、ASHCEのレポーターアッセイ、ChIP-seq解析などをおこない、ほぼ予定通りの段階まで達成できた。これまでの研究成果をまとめ、現在既に論文執筆中であることも加味すると、おおむね順調に進展しているものと評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
Sim1近傍のASHCEのエンハンサー活性についてさらに解析を進めるとともに、Sim1が風切り羽形成に関してどのような機能をもつのかを解析する予定である。具体的には、まずSim1の発現解析をより詳細なレベルでおこない、発現開始時期や発生に伴う発現の変化を記載し、風切り羽形成とどのように関連しうるのかを考察する。また、ニワトリ胚を用いた機能亢進および機能抑制実験を実施することで、Sim1の機能解析をおこなう。さらに、トランスジェニックマウスを作製することで、Sim1の強制発現による影響を見る。
|