研究課題
(1)Sim1の発現解析前年度までの解析により、Sim1がニワトリの前肢(翼)の原基の特に風切羽の形成領域に発現することが明らかとなっている。風切羽は、翼に加えて尾においても形成されることが知られている。そこで、尾においてもSim1が発現しているかどうかを解析した。その結果、翼の場合と同様に、羽毛形成よりもわずかに早い発生段階からSim1がその領域に発現することが明らかとなり、風切羽形成とSim1発現との間に相関関係があることが示された。(2)Sim1の機能解析上の解析結果を受け、Sim1が実際に風切羽形成に寄与するかどうかを明らかにするため、Sim1の機能解析をおこなうことにした。当該年度は、安定したSim1強制発現系を確立するために複数種類のトランスジェニックマウスの作製を試みた。1つは、既知の肢芽特異的プロモーター(Prx1プロモーター)を用いたもの、2つめは、ニワトリのSim1遺伝子座を含むBAC DNAを利用したもの、3つめは、ニワトリの風切羽形成領域での発現をもたらすSim1エンハンサー(前年度までに同定したもの)を用いたものである。当該年度ではこれら3種類全てのトランスジェニックラインを作製した。現在、期待するようなSim1発現が確かに見られるかどうか解析中である。これと並行して、Sim1が風切羽形成のどのような側面に寄与するのかという点に関して解析を進めた。過去の報告では、風切羽原基の1つ1つに神経が投射する様子が示されている。そこで、Sim1と神経投射の関係性の有無を評価する第一段階として、神経投射の起こるタイミングの調査をおこなった。現在、ホールマウントで神経配向パターンを可視化する手法を確立した段階であり、今後より詳細な解析をおこなう予定である。Sim1との関連が強く示唆された場合は、上述のトランスジェニックマウスにおいて神経配向パターンに変化が生じるかどうかを検証する。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、Sim1の発現パターンをより詳細に解析し、Sim1と風切羽形成との間の相関関係を見出すことができた。Sim1の機能解析に関しては現在実施中ではあるが、次年度に向けて複数のトランスジェニックマウスラインを確立することができており、おおむね順調に研究が進展していると評価している。
まず、確立したトランスジェニックマウスラインにおいて、期待する時期や領域でSim1が確かに発現しているかどうかを調査する。この解析と並行して、ニワトリ胚においてもSim1の機能解析をおこなうことを計画している。具体的には、Sim1を組み込んだウイルスベクタープラスミドをin ovo electroporationにより前肢芽の異所的な領域に導入する。これらの個体に関して、上述したような神経配向の変化を含め、どのような表現型が生じるかを解析する。
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