研究課題/領域番号 |
14J07064
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 宣仁 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 皮膚組織 / 皮膚モデル / 流路 / 灌流 / 血管 |
研究実績の概要 |
本年度は、物質内包リポソームによるドラッグデリバリーシステムの評価基盤として、灌流可能な血管流路を有した皮膚組織構築を目指した。 人工的に作製された皮膚組織は、化粧品や薬剤の試験に使用されている。報告者は昨年度、薬剤の経皮吸収や、薬剤を血管に注入した後の皮膚への影響測定のために必要な血管構造を皮膚組織に組み込むべく、皮膚組織に流路を構築するデバイスを作製した。しかしながら、当該デバイスではヒト皮膚に近い厚み(~1 mm)の組織を作製する際に、組織の自重及び収縮により流路が閉塞する問題があった。そこで、本年度は、流路内壁を血管内皮細胞で覆うことで、より分厚い皮膚組織を作製することを目指した。 まず、皮膚組織の大きな収縮が起きた状態でも、皮膚組織-培養デバイスの接合が液体の灌流に耐えうるよう、培養デバイスの表面処理を比較検討した。無処理、無処理(排出チューブのみ)、皮膚用接着剤、及びO2プラズマ処理の四種類の培養デバイスに対し、インクを注入したところ、皮膚用接着剤ないしO2プラズマ処理を行ったデバイスにおいて、接合部からの漏れが顕著に少なくなった。この結果より、皮膚用接着剤が組織中に残留することのないO2プラズマ処理を培養デバイスの表面処理として採用することとした。 続いて、組織表面に水滴を滴下することで、表面が撥水性になっていることを確認した。このことから、本デバイスで培養した皮膚組織の表皮は正常に角化していると考えられる。さらに、HE染色及び免疫染色により、流路の空洞構造維持、及び血管内皮細胞のマーカータンパク質(CD31)の発現を確認できた。なお、血管内皮細胞を播種しなかった場合、流路は閉塞してしまった。この結果から、血管内皮細胞が、空洞構造の維持に寄与していると考えられる。以上の成果は、化粧品、創薬といった分野で利用可能な血管付き皮膚組織作製において有用であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的である物質内包リポソームの創製に向け、計画修正を行い、より重要度の高い、評価基盤としての皮膚組織構築に注力している。本年度は予定通り、厚みのある皮膚組織において灌流可能な流路を構築することに成功しており、進捗としては順調である。
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今後の研究の推進方策 |
作製した灌流可能な流路付き皮膚組織の有用性を評価するため、リポソームや薬剤等を塗布し、血管への取り込み等を測定する。また、長期間の培養を行うことで、灌流の効果を実証する。
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