研究課題
シロイヌナズナには世界中に1000種以上のaccession(自然変異系統)が存在し、これらのaccession間には耐塩性に大きなバリエーションが確認されている。先行研究から耐塩性accessionは、塩に馴化することで強力な浸透圧ストレス耐性 (塩馴化後浸透圧耐性) を示すこと、さらにこの塩馴化後浸透圧耐性には1遺伝子座 (ACQuired OSmotolerance locus: ACQOS locus) が寄与していることが示された。ACQOS locusを特定するため、当該領域のみを耐性種Bu-5由来の塩基配列に置換したCol-0バックグラウンドのNILを作出した。NILを用いた高精度遺伝学的解析の結果、当該領域を67 kbまで絞り込むことに成功した。この67kb内にはBu-5とCol-0の間に塩基配列が大きく異なる領域が存在すること、両者においてもその領域にはNB-LRR (NLR) がコードされていることが明らかとなった。これらの遺伝子を用いた相補試験の結果、Col-0の有するNLRが塩馴化後浸透圧耐性を抑制する原因遺伝子ACQOSであることが示された。NLRは、病害抵抗性を誘導する植物免疫センサーとしての役割が知られている。そこでACQOSの免疫応答への関与を調べるため、浸透圧ストレス下における免疫応答の活性化を調べた。その結果、Col-0は浸透圧ストレス下でサリチル酸の高蓄積と免疫応答遺伝子の発現誘導を示したことから、ACQOSは浸透圧ストレスにより免疫応答を活性化することが示唆された。次に免疫応答に働く因子の欠損変異株(Col-0バックグラウンド)における塩馴化後浸透圧耐性を評価した結果、免疫応答の主要制御因子欠損株であるeds1, pad4は塩馴化後浸透圧耐性を示した。一方、サリチル酸枯渇株sid2, eds5、およびNahG過剰発現株は、塩馴化後浸透圧耐性を示さなかった。これらの結果から、ACQOSによる塩馴化後浸透圧耐性の抑制はEDS1/PAD4を介したサリチル酸非依存的なシグナル伝達経路に依ることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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