研究課題
室内全体に対する無線電力伝送システムを構築するための要素技術として、受電端末へのルーティング技術の開発、および、電圧の安定化と電力効率最大化を同時に実現する手法の開発を行った。受電端末へのルーティング技術は主に受電端末の位置検出技術と中継共振器のスイッチング技術から成る。受電端末の位置検出技術として、複数の周波数における電流分布の変化を利用した手法やNear Field Communication(NFC)技術を用いた手法などを検討し、位置検出の確実性と受電端末における電源の制約により、最終的にNFC技術を用いた受電端末の位置検出手法を選択した。各中継共振器にNFCリーダを、受電端末にNFCタグを接続することによって、受電端末の位置検出が可能であることを実験的に示した。中継共振器のスイッチング技術として、機械式リレーを用いた共振器のON/OFFスイッチング機構を実装し、送電共振器から受電共振器まで自動的に仮想的な電力のパスを構築することに成功した。電圧の安定化と電力効率最大化を同時に実現する技術に関しては、現存の電力効率最大化手法と電圧を安定化するスイッチングレギュレータとの不適合性を明らかにし、スイッチングレギュレータと電力効率最大化を同時に実現する手法を提案した。スイッチングレギュレータを受電器内に実装し、出力電圧を安定化した場合、現存の電力効率最大化技術で想定されている動作点は不安定となる。そこで、安定点において最大効率な給電が可能となるように送電システム全体が満たすべき条件を理論的に明らかにし、その条件を満たすための簡便な設計手法を提案した。回路シミュレーションおよび実験により手法の正当性を確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では、1年目に受電端末の位置検出技術を開発し、2年目に負荷最適化技術に取り組む予定であった。それに対して、平成26年度には位置検出技術のみでなく、負荷最適化技術についても一定の成果を得ることができた。その点で、研究の進行としては計画よりも早いペースで実施できている。しかし、位置検出技術に関して、位置検出そのものに対してはすでに問題ない水準にあるが、位置検出用回路に対して如何にして電力を供給するのかなど解決すべき課題が残されている。また、負荷最適化技術に関しては、周辺物質による悪影響に対応するための機構と併用することが実環境使用に対して必須であり、両者を共存されるための手法を検討しなくてはいけない。上記の状況より、研究目的はおおむね順調に進展していると考えている。
研究の方向性として、第1優先は、平成26年度に開発したルーティング技術および負荷最適化技術の完成度を高めることにある。ルーティング技術に関しては、NFCリーダの電力を如何にして供給するのかなどの回路的な問題だけでなく、受電端末が如何にして位置検出モードと電力受信モードを切り替えるかなどプロトコルに関する問題も解く必要がある。負荷最適化技術に関しては、周辺物質による効率低下や、共振器の特性変化による効率低下に対処するための回路技術を内包していく必要があると考えている。効率の低下原因として、実験環境においては負荷抵抗値の最適値からのずれが非常に大きな原因であるが、実環境を考えると周辺物質や共振器特性の変化も無視することができない。これら全ての問題に対処できる画一的な機構に発展される必要があると考えている。上記の課題を解決することにより、実用化可能な技術につなげていく予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件)
情報処理学会論文誌
巻: 56 ページ: 250-259