研究課題/領域番号 |
14J07147
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成末 義哲 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 可変リアクタ / D級インバータ / 磁界共振結合 / 無線電力伝送 / スイッチングレギュレータ / 最大効率点追従 / 位置推定 |
研究実績の概要 |
本年度は(1)無線電力伝送空間における受電端末の位置検出技術の研究開発、および、(2)無線電力伝送システムにおいて電圧の安定化と電力効率最大化を同時に実現する手法の確立、(3)大電力に対応した可変リアクタの開発を行った。それぞれに関して以下に述べる。 (1)昨年度の実装においては、NFCの通信可否によって、受電端末の位置を推定していたが、この場合、複数の送電器と通信できてしまう場合があるため、必ずしも正確な位置推定が可能であるとは限らなかった。そこで、通信時の信号強度を取得可能であるNFCデバイスを適用することによって、より詳細な位置検出を可能とした。 (2)2014年度に提案したスイッチングレギュレータを用いた伝送電力安定化と電力効率の最大化手法は、整流回路やスイッチングレギュレータ内における損失を無視した解析に基いていたが、より詳細に安定点を解析するためには、それらの損失は無視することができない。2015年度には、それらの損失を考慮した等価回路を解析的に解くことにより、損失を考慮した場合の安定条件を導出した。ただし、その安定条件式は、非常に品雑であり、設計に用いることが困難であったため、十分条件に式を変形することによってシステム設計を可能とした。十分条件式においては、スイッチングレギュレータ以降と、整流器以前を分離して評価することが可能である。 (3)無線電力伝送システムを実装するなかで、共振器の特性変化が大きな問題であることは以前から広く知られていた。この問題に対応するため、新しいデバイスの開発に取り組み、D級インバータを応用した可変リアクタを提案した。これは、高周波電源が時にリアクタとして動作することがあることに着目したものであり、新素材GaNを用いた実装に成功した。現在、測定および評価を行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無線電力伝送システムを実装する中で、安定な電力伝送を維持することは現状としても非常に難しい。それは負荷抵抗値や共振器間結合、ひいては、周辺環境の変化により共振器の特性も変化してしまうためである。これらの問題を解決するためにスイッチングレギュレータを用いた伝送電力安定化のための高効率なシステム設計手法、および、共振器特性を調節するためのD級インバータを応用した可変リアクタを提案することができたことは、無線電力伝送に関わるコミュニティに対して一定の貢献をしたものとみなすことができる。それに加えて、これらの技術は室内給電の無線化を目指す中でも無くてはならない技術であるため、本研究課題における成果としても十分評価に値するものであると考えている。その一方で、現状の検討はいまだ基礎的なものであり、実用化に向けた検討を重ねていく必要がある。また、2015年度には論文誌の掲載数が0であったため、本年度は、得られた成果を今後積極的に論文化していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、主に2つのことに注力したいと考えている。1つ目は2015年度に提案したD級インバータを応用した可変リアクタをより詳細に評価し、国際学会や論文誌への投稿を行うことである。特に条件に依存して損失が増減するため、D級インバータの高効率化手法を応用した低損失化に関して検討を行いたい。D級インバータを応用した可変リアクタは、今までにない新しい回路であり、コミュニティに対しても一定のインパクトがあるものであると考えている。2つ目は、室内給電のプロトタイプ実装である。昨年度には、建材メーカーとの共同研究にも参加し、相互に協力し合った研究活動を推進することができた。そこで本年度は、建材メーカーの技術者とも議論を重ねたうえで、将来の住宅環境を想定したプロトタイプ実装を行いたいと考えている。そのために、アルミ印刷技術を用いた共振器の製造に関して新しく検討を行う予定である。アルミ印刷で使用に耐え得る共振器の実装が可能であれば、価格、製造容易性、サイズの面で非常に有用であると考えている。
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