研究課題/領域番号 |
14J07160
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
荻野 禎之 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | サリドマイド代謝産物 / 複雑代謝系 / 蛍光HPLC / 蛍光誘導体化 / LC-MS/MS / 数理モデル / 数値計算 |
研究実績の概要 |
サリドマイドの主要な代謝である加水分解と酸化に着目し、in vitroでのそれぞれの代謝反応の関連性を調べた。各代謝産物を定量するための、クロマトグラフィー分析条件の検討を行った。CD-1マウス由来の肝臓ミクロソーム抽出液(酸化酵素CYPを含む)を用いて、サリドマイドのエナンチオマーを加水分解・酸化処理した。それぞれの反応時間を変化させ、蛍光誘導体化試薬であるDBD-APyおよびDBD-COClでプレカラム処理した。種々の分析条件を検討した結果、アダマンチル基を固定相とした逆相カラムを用いると良好な分離が得られた。各保持時間における溶出ピークのUVスペクトルをスキャンし、各溶出ピークに含まれる物質を推定してその存在量の経時変化をプロットした結果、二種類の代謝反応の反応時間によって特徴的な二次元プロットが見られる傾向を発見した。 次にサリドマイドの主な代謝である加水分解、酸化、キラル反転が同時に起こる「三次元代謝」をより定量的に理解するために、反応速度論に基づいた代謝系の数理モデルを構築した。準定常状態や律速段階近似などを考えず、実際の代謝反応速度から設定したパラメータを用いて数値計算を行い、すべての加水分解産物とそのエナンチオマーの存在量の経時変化をシミュレーションした。また、酵素などの外的要因によって反応速度が変化した状況を考え、代謝産物の生成・分解・キラル反転を表すパラメータをさまざまに変化させ、最終的に代謝系に残存するキラリティの偏りを計算したところ、特徴的なパラメータの組み合わせにおいて特徴的なパターンが現れることを見出した。さらに、先行研究にあるサリドマイド加水分解産物のTNF-α産生抑制作用をパラメータとして、代謝中にTNF-α産生抑制作用が経時的にどのように変化するかを計算したところ、先行研究の生物学的実験の結果を新しい観点で解釈することができた。これらの内容はJ. Theor. Biol.誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加水分解とキラル反転に加えて酵素依存的な酸化も検証の対象に加えることで、より実際に近いサリドマイドの代謝系に迫ることができるようになった。適切な誘導体化法を選択することで、サリドマイド代謝産物の経時的な生成や分解を追跡することができる実験条件が定まりつつある。また量子化学計算などによって、それぞれの代謝産物の安定性などの情報が得られており、実験結果の解釈に役立った。これらの結果は、既に臨床応用されているサリドマイドの誘導体における代謝系の解析にも有用である。一方で、同時に生成する複数の代謝産物の明確な区別には未だ不十分な点もある。LC-MS/MS分析やCDスペクトル測定を組み合わせた実験系により、キラル反転の進行まで含めてより効果的に複雑代謝系を解析できることが今後期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後はLC-MS/MSによるフラグメント解析により代謝産物のより詳細な同定を行う。反応時間や反応温度をパラメータとして変化させ、理論計算の結果と組み合わせて反応エンタルピーや反応エントロピーなどの物理化学的な知見をより得られるようにする。また、複雑代謝系に接する受容体となるタンパク質との相互作用の定式化も進める。
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