採用最終年度となる本年度は、昨年度に引き続き、現地調査に研究の重点を置く一方で、報告者の受入機関であるインドネシア科学院(LIPI)をはじめとした現地研究機関との交流を通じて、報告者の研究内容を研鑽してきた。 【現地調査】本年度は、延べ7ヵ月の現地調査を通じて、調査対象村落における生業や住民組織といった社会構造を包括的に把握するとともに、地方自治体が所有する行政資料の収集、さらに、村落で行われる慣行や儀礼について参与観察を行った。そのうえで、ひとつ具体例を挙げると、報告者は、当該村落で行われる(ともすれば、イスラーム的な視点からは邪視され得る)憑依儀礼に着目し、霊的現象の存在に対する村人の認識や解釈に関する語りに対する分析から、インドネシアの都市近郊村落における今日の近代化やイスラーム化の動向について、明らかにすることを試みてきた。なお、本年度も、インドネシアの法令を遵守すべく、外国人調査許可の延長手続きを完了させたうえで調査活動を遂行した。 【研究成果】報告者は、ダルマ・プルサダ大学で開催された日本インドネシア学会共催の国際シンポジウム(2016年6月)にて、日本とインドネシアとの相互理解の深化に向けた発表を行うともに、インドネシア科学院にて日本とインドネシア両国の若手研究者によるワークショップを開催(2016年9月)するなど、現地研究機関との研究交流を深めた。また、これまでの調査研究の成果を明らかにすべく、国際学会と国内の学会・研究会に合計で4つの要旨を提出するとともに、発表予定の内容を学術誌に投稿すべく、現在、2本の論文を執筆中である。なお、既刊の研究成果としては、報告者の研究分野において重要な学術的貢献を果たしうる著書の書評論文の執筆(『社会人類学年報(42)』〔弘文堂〕)、および『「国家英雄」が映すインドネシア』(木犀社)に収録される論文の翻訳などの仕事を行った。
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