研究課題
本研究課題では、高齢者の運動行為遂行上の問題原因を運動に関連した認知的側面から明らかにすることを大きな目的としている。平成26年度は、2重課題時(2つの課題を同時に行う課題)の歩行動作の乱れと運動イメージ能力(どのように体が動いているかイメージする際の明瞭性)の関連性を横断的に検討した。実験には124名の健康な高齢者が参加し、歩行の解析(5m)および運動イメージの測定を行った。歩行解析では通常歩行に加えて、100から1ずつ減算する課題(以後、A課題)と100から7ずつ減算する課題(以後、B課題)を2重課題として行った。歩行能力の指標として、歩行速度および歩幅の変動係数(歩幅の乱れを示す)を算出した。運動イメージの測定には、足の画像を用いたメンタルローテーション課題を用い、実験参加者は4つの角度(0°、90°、180°、270°)から提示された画像がどちら側の足なのか、ボタン反応にて回答し、その反応時間を測定した。各歩行課題間で測定変数を比較したところ、通常歩行時に比べて、A課題時およびB課題時では、有意に歩行速度が遅く、歩幅の変動係数が大きくなっていた。歩行課題成績とMR課題成績の関連性を検討したところ、A課題時の歩幅変動係数とMR成績(全角度の平均反応時間)の間に有意な相関関係が認められた。この結果は高齢者の歩行動作が自動的に行われているわけではなく、潜在的に運動イメージの能力が関連している可能性を示唆している。このような2重課題時の歩行動作の乱れと運動イメージ能力の関連性について、若年者を対象とした実験を引き続き進めている。
2: おおむね順調に進展している
100名を超えるデータから、高齢者の運動行動に対して運動イメージ能力がどのように関与について、十分に信頼性の高い資料が得られている。したがって、本研究はおおむね順調に進行しているといえる。
今後、横断的な検討を続けるとともに、運動イメージ能力の改善が実際の運動行動に与える影響を検討するため、縦断的および介入的研究を進めていく予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
公衆衛生学雑誌
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Arch Gerontol Geriatr.
巻: 59 ページ: 577-83
http://dx.doi.org/10.1016/j.archger.2014.07.017
BMC Geriatrics
巻: 21 ページ: 14
10.1186/1471-2318-14-122
J Gerontol A Biol Sci Med Sci
巻: 69 ページ: 1519-27
10.1093/gerona/glu093