研究課題
H27年度は、高齢者の歩行運動遂行に重要な役割を果たしていると考えられる運動イメージの能力を高めることによって、歩行がどのように変化するか明らかにすることとした。14名の地域在住の研究参加高齢者に対して、歩行解析と運動イメージ能力測定を含む事前検査を行った。歩行解析では通常歩行に加えて、歩きながら100から1ずつ減算する課題と100から7ずつ減算する課題を2重課題として行った。歩行能力の指標として、歩行速度および歩幅の変動係数(歩幅の乱れを示す)を算出した。運動イメージの測定には、足の画像を用いたメンタルローテーション課題(MR)を用い、実験参加者は4つの角度(0°、90°、180°、270°)から提示された画像がどちら側の足なのか、ボタン反応にて回答し、その反応時間を測定した。事前検査後、研究参加者を運動イメージ介入群と対照群の2群にランダムに割り付け、運動イメージ介入群には週2回の介入を4週、計16回行った。介入の内容は、事前検査でも用いた足部のメンタルローテーション課題とした。他方、対照群は週1回の講座型の健康教室に参加した。介入終了時に事前検査と同内容の事後調査を実施し、MRを用いたプログラムの歩行機能への効果を検討した。介入期間終了後、MRの反応時間および歩行解析結果を介入群と対照群で比較したところ、介入群と対照群の間には介入期間にともなう有意な差は認められなかった。両群においてMRの反応時間に差が認められなかったことに鑑みると、本研究の介入頻度や介入に用いたMRの提示刺激に改良の余地があると推察される。
2: おおむね順調に進展している
研究結果から、先行研究結果を応用する際の注意・改善点を明らかにすることができた。また研究展開の必要性から、研究計画にはない、高齢者の運動遂行不安を生み出す脳機能低下部位を探ることも試みており、十分に信頼性の高い資料が得られている。したがって、本研究はおおむね順調に進行しているといえる。
今後、横断的な検討を続けるとともに、運動イメージ能力の低下が実際の運動行動に与える影響を検討するため、縦断的検討を進めていく予定である。加えて、PET(Positron Emission Topography)を用いた脳機能画像データの収集も進んでおり、データ解析が終了次第、加齢に伴う運動イメージ能力低下との関連性を検討する予定である。
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巻: In press ページ: In press
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