研究課題
本テーマの目的は、腫瘍組織由来の細胞群から薬剤耐性の細胞あるいは悪性がん細胞(浸潤細胞)を選出し、テーラーメード検査に用いる細胞材料を提供することである。今年度の研究では、細胞を内包する光分解型3次元培養基材の再改良および、検体とするアゾキシメタンによる発がんマウスの作製および発がんマウスからの細胞ストックの作製を行った。前年度の研究では、細胞を内包する材料として要となる光分解型3次元培養基材(光分解型ゲル)の改良を行った。前年度の光分解性ゲルは、ゼラチン中アミノ基と、ニトロベンジルを光開裂部位として有する4本鎖ポリエチレングリコールの末端N-ヒドロキシスクシンイミド(光開裂型架橋剤)を反応させて作製していた。このゲルを特定条件にて作製することで、ゲル内包後の細胞の生存率を高く維持し、光分解により特定細胞のみ取り出せることを前年度に確認した。しかし、アミノ基と反応する架橋剤であったために、細胞膜との反応による細胞毒性が懸念されることに加え、成長因子など生理活性物質を添加したゲルが作製出来ないなどの問題があったが、クリック反応による光開裂型架橋剤を新規合成することにより、これらの問題を解決した。また、アゾキシメタンによる発がんマウスを作製し、腫瘍を目視にて確認できた臓器(原発巣と考えられる小腸、大腸、転移巣と考えられる肺)を摘出した。摘出した臓器を酵素処理により細胞間質を分解し、ディッシュ上で培養することで腫瘍由来の細胞を増殖させ、凍結ストックを作製した。アゾキシメタンによる発がん誘発処理を行ってから腫瘍組織由来のストック作製までに5ヶ月以上要したために、薬剤感受性試験などはまだ実施していないが、上記したクリック反応による光分解性ゲル内で培養が可能であることは確認済みである。また、光分解性ゲル内に包埋した細胞が多様な形態を示すことも確認した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度の研究により、3次元培養環境下への生理活性物質の添加が将来的に必要と示唆したため、その要件を満たすゲルの開発を行った。このゲルの開発により当初の研究計画よりも半年ほど遅れた進行状況となったが、必要要件を満たすゲルの作製に成功した。一方で、ゲルの開発と並行して行った発がんモデルマウスの作製は順調に進んでおり、腫瘍組織由来細胞の凍結ストック作製に至っている。先に記載したとおり研究系計画が半年ほど遅れているものの、本研究テーマ抗がん剤薬剤感受性テーラーメード検査の動物実験による検証を行う研究状況に至っているため、おおむね順調に進展していると評価した。
H27年度の研究で、光分解型3次元培養基材の作製条件と、テーラーメード抗癌剤感受性検査法を行なうための発がんマウスの作製を行い、実験計画書に記載したテーラーメード抗癌剤感受性検査法を実施するためのIn vitroの準備が整った。今後の研究では、当初予定していた研究計画通りに、マウスから採取した凍結細胞をクリック反応による光分解性ゲル中に包埋培養した状態での薬剤感受性試験、および生存した薬剤耐性細胞の分離、分離した細胞の薬剤スクリーニングを行う。これら一連の研究で得られたデータを元に、発がんモデルマウスに対する抗がん剤治療を施し、テーマである抗がん剤感受性テーラーメード検査の検証を行う予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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