研究課題/領域番号 |
14J07212
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 こずえ 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | グロー放電プラズマ / 表面処理 / 生体材料 / Co-Cr-Mo合金 |
研究実績の概要 |
中空陰極型グロー放電プラズマ表面処理装置を開発した。従来の平板電極型の装置で生成したプラズマに比べ、電子の往復運動によりガス粒子と電子との衝突頻度が上昇することで、プラズマ中の酸素活性種の数密度や陰極のスパッタリング量の増大が期待できる。また、ヘリウムと酸素の混合ガスプラズマの表面処理への適応にも取り組んだ。準安定状態をもつヘリウムは、酸素励起のためのエネルギーの供給源としての役割が期待できる。純酸素プラズマとヘリウムと酸素の混合ガスプラズマを比較することで、それぞれのプラズマにおける酸素励起過程の特徴を発光分光分析を用いて明らかにした。 ヘリウム-酸素混合ガスプラズマは純酸素プラズマに比べ、酸素分子イオン励起種の数密度を大幅に増大させる効果を有することが判明した。その励起過程を詳細に検討すると、その現象は、ヘリウムの準安定状態の励起エネルギーに近接する条件で特に顕著に観察されることがわかった。これまでの学説では、ヘリウムの準安定状態の励起エネルギーに対する差分は電子が引き受けるため、エネルギーのマッチングはシビアには求められないとされていた。しかしながら、本研究において、準安定状態ヘリウムのエネルギー供与が起こる頻度が0.1eV単位で大きく変化することが明らかになった。また、ヘリウムにより数密度が増大した酸素分子イオン励起種は、陰極スパッタリングを起こすことで、陰極の金属元素をプラズマ中に導入する役割を担うことが高分解能分光器を用いた分析から明らかになった。また、このプラズマを用いることによりCo-Cr-Mo合金上に均一な組成をもつ酸化皮膜を短時間で生成することに成功した。これらの成果は、7. (2)-1および4に記す国内学会にて口頭発表を行うと共に、今後、国際学会発表(IGDSS2016, England, 4/19)および原著論文発表を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目には、先に提案した生体用Ti-6Al-4V合金に対してAlおよびVの生体毒性を低減可能な表面処理技術を提案した。この酸素グロー放電プラズマ法の機能発現メカニズムを発光分光分析による詳細な分析を行うことにより、酸素イオン分子がその機能性表面皮膜の形成に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
2年目は、1年目に明らかにした酸素グロー放電プラズマの特性を生かした高反応性の中空陰極型グロー放電プラズマ表面処理装置を開発した。従来の平板電極型の装置で生成したプラズマに比べ、電子の往復運動によりガス粒子と電子との衝突頻度が上昇することで、プラズマ中の酸素活性種の数密度や陰極のスパッタリング量の増大が期待できる。また、ヘリウムと酸素の混合ガスプラズマの表面処理への適応にも取り組んだ。準安定状態をもつヘリウムは、酸素励起のためのエネルギーの供給源としての役割が期待できる。純酸素酸素プラズマとヘリウムと酸素の混合ガスプラズマを比較することで、それぞれのプラズマにおける酸素励起過程の特徴を発光分光分析を用いて明らかにした。結果、従来法に比べ格段に皮膜成長速度の大きい表面処理技術を提案することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目に開発した手法を先端的な生体用機能性合金に適応する。近年では、金属生体材料による代替人体機能の要求が多様化しており、高い耐食性に加え、高耐久性、超弾性(形状記憶)、低ヤング率、高延性(柔軟性)等の高度な力学特性の付与が求められている。しかし、力学的特性発現に有用な合金元素が体内へ溶出した場合、毒性を示す例が報告されている。このため、安全性の確保が組成探索に基づく高機能合金開発のボトルネックとなっている。本研究で開発した表面処理法を適応することでこの課題の克服を図る。
|