研究実績の概要 |
本研究では、日本の高校生が1年間の交換留学経験を通してどのような「できごと」に出会い、そこから何を「学び」、さらにそれはその後の大学生活における実際の行動や態度にどのように活用されているのかを明らかにしようとしている。26年度はまず、25年度に実施した大学4年生13名に対するインタビューの内容を検討した。13名から61個の具体的な「できごと」および「学び」を抽出し、以下の点が明らかになった。 ①留学中に自分が成長したと感じた「できごと」は、「文化間移動にともなう問題」と「青年期の問題」(Furnham & Bochner, 1986)の両者から成っている。 ②上記の「できごと」からの「学び」は、アメリカでの先行研究(Hansel, 1986)とほぼ同様で、「個人の価値観やスキル」「対人関係構築」「異文化知識・感受性」「グローバルイシュー意識」に渡っている。ただし本研究では、机上の勉強以外の「異なる学習方法を知った」という「学び」が抽出されており、これは先行研究で言及されていなかった点であることから、日本人留学生の特徴である可能性がある。 ③留学で得られた61個の「学び」のうち、48個がその後の生活の具体的な場面で活用されていた。 ここまで、リーダーシップ開発論における「一皮むけた経験」研究(金井, 2002など)を参考にしながら、高校交換留学によって得られる経験と学びを整理することができた(上記①②)。今後は、インタビューで語られた「できごと」のコンテクストや「学び」に至った経緯を詳細に検討することで、高校生の留学で期待されるような成果をあげるために重要な要素を明らかにする。これによって、高校留学全般に対する実践的示唆が得られると考えている。 ③については留学経験の「活用」の概念の再検討を進めている。26年度末から追加インタビューを実施している。今後の見通しについては後述する。
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