研究課題/領域番号 |
14J07274
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
日高 良祐 東京藝術大学, 音楽研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | メディア研究 / 音楽メディア / メディア史 / メディア技術史 / ポピュラー音楽研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ポピュラー音楽における「音楽メディア」観の変遷のコンテクストを明らかにするため、いくつかの「音楽ファイル」フォーマットの技術に着目し、それが社会的に生成されていく過程を歴史的に考察することである。Society and Technology Studiesの知見を音楽研究の領域に接続することで、これまで看過されがちであった「音楽メディア」や「デジタル化」の歴史的な存在拘束性を明らかにするという意義がある。 当該年度は、上記の目的に沿って積極的に資料収集と分析を行なってきた。散逸しつつある雑誌等の文献資料収集を体系的に行なってきたことはもちろん、ほとんどブラックボックス化している歴史をインタビュー調査によって明らかにしつつある点は重要である。いわゆるネット時代以降のデジタルな文化実践は、実践自体がログとして残るものと考えられがちであり体系的なアーカイブが行なわれることは少なかった。たとえばInternet Archiveの運用は希有な事例としてカウントできるし、インターネット以前のパソコン通信時代に関しては、ほとんどデータが残されていない状況である。本研究では、その失われてしまった歴史を、当時から活動してきたアマチュア・ミュージシャンへのインタビューによってオーラル・ヒストリーとして収集している。これは本研究の方法論的な特色であり、他に存在しない価値であるといえる。 平成26年度の研究実施計画に沿って、具体的な資料収集と理論的な考察の2本を柱とした研究活動を行なってきた。資料収集については上記の通りの成果を出している。また、理論的考察についても、STSやSoftware Studies、聴覚文化論の領域での議論を援用すべく、日本国内でそれらの領域に関心を持つ研究者らと連絡を取り、研究会等を通じて情報交換を積極的に行なってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、平成26年度に博士論文を提出予定であったが、当該年度の提出は行なわず平成27年度の提出を予定している。これは、研究を進めていく中でインタビュー調査の重要性が想定以上に高まったための変更である。【研究実績の概要】で述べたように、本研究の対象領域については資料がほとんど体系化されてこなかった。本研究が行なっているフィールドワークによる資料収集は、その点での大きな貢献をすることができている。そのため、博士論文提出の予定を変更することで、インタビュー調査にあてる期間を延長することとした。博士論文執筆の進捗については、平成26年度末の指導教員会議にて次年度の論文提出が可能であることをすでに確認済みであり、より詳細な分析と考察を行なうべく、インタビュー調査にさらにリソースを割きながら研究活動を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の最終的な目標は博士論文の提出である。 これまでに行なってきた文献調査とインタビュー調査から得られた資料を徹底的に分析し、現在は論文の執筆を中心とした研究活動を行なっている。4月からは補足的な調査としてインタビュー調査を適宜追加しながら、8月頃までに博士論文の草稿執筆を完了させる予定である。さらに、必要に応じて追加の資料収集を行ないつつ、11月までに完成稿を執筆する。2016年は、ここまで研究してきた内容について、積極的にアウトプットを進めていく予定である。
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備考 |
(2)は、2014~2017年度 日本学術振興会科学研究費補助金基盤(B)「デジタルメディア時代の政治的公共性とナショナリズム」(研究代表者:伊藤守・早稲田大学)(課題番号26285121)の研究活動の一環として設置されたものであり、報告者は研究会への参加メンバーとしてウェブサイトの構築・運営を行なっている。
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