本研究は、複数の生物地理学的要素を持つと考えられるインドネシア・スラウェシ島において、島内の生物相の起源を推測することを目的としている。特に、菌食甲虫であるデオキノコムシ亜科を対象として形態形質及び分子情報に基づいて研究を行った。本研究で対象としたデオキノコムシ亜科甲虫は菌類と関連が深いことから森林環境に強く依存し、森林を乗せた大陸移動に伴う分布を示す可能性がある。そのため、本亜科は、スラウェシ島の生物多様性の形成史を解明する上で極めて重要な分類群であると考えられる。本年は、核のwingless、CADの部分領域を追加し、より詳細な高次の系統解析を行った。分子情報から、島内における好白蟻性デオキノコムシ類(キノコシロアリ類の栽培するキノコを専食する)はその多くが東洋区から由来したことが明らかとなった。また、日本-スイス若手研究者交流事業の特別研究員として採用され、スイスのジュネーブ自然史博物館にてIvan Loebl博士との共同研究を進め、複数の共著論文を作成した。形態形質情報から、昨年より16新種を追加し、スラウェシ島におけるデオキノコムシ類の多様性は12属61種に達した。
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