研究実績の概要 |
本課題は、バナジウムの特徴(オレフィンとの高い反応性)を活かした高性能分子触媒の設計・創製に関する。 特に期間内には、今迄の申請者の成果を基盤に、キレートアニオン性配位子を有するアルキルカチオン錯体やアルキリデン錯体、メタラサイクル錯体の合成と反応性に関する研究に焦点を絞って、特にオレフィンの選択的オリゴマー化やメタセシス反応に有効な高性能分子触媒の設計指針を確立したいと考えている。平成27年度の研究成果は以下の通りである。 オレフィンの配位重合の活性種であるアルキルカチオン種に関する知見を得るために、中間体となるジメチル錯体、さらにホウ素化合物との反応によってNMRスペクトルからカチオン錯体の生成を確認した。合成・単離したエーテル配位アルキルカチオン錯体は、溶媒の強い配位によるためかエチレンとの反応性を示さなかった。一方、ジメチル錯体は、従来報告されているジクロロ錯体と同様にエチレン二量化に高活性を示した。 また、独の研究室との共同研究で、ホウ素が配位したN-ヘテロ環状カルベン配位子を有するバナジウム錯体を合成・同定し、エチレンとの反応性を検討した。この配位子は、配位子による中心金属のカチオン性の向上と電荷の非局在化による活性種の安定化に起因し、重合触媒としての高い機能発現が期待される。錯体は各種Al助触媒存在下(MAO, AlMe3, AlEt3, AliBu3, Et2AlCl)、エチレン重合に触媒活性を示した。特に一部の錯体は、他の遷移金属触媒では一般的に活性を示さない(安価で化学産業で容易に入手可能な)AliBu3助触媒存在下で高い活性を示し、従来錯体とは異なる反応性を示した。
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