研究課題/領域番号 |
14J07371
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤原 和将 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | Young inequality / Holder inequlality / 半相対論的方程式 / local well-posedness / global solvability / compactness argument |
研究実績の概要 |
Young の不等式に関する等式の表現の精密化及び, 冪乗型の非線型項を伴った半相対論的方程式の, 初期値問題の適切性と初期値の微分可能性との関係を研究している. Youngの不等式に関する等式の表現の精密化に関する研究は, Youngの不等式に対応する等式を具体的に書き下し, Youngの不等式の理解を精密にする事を目的とする研究である. Youngの不等式に関する研究の当初は, 整数を指数とするYoungの不等式の誤差を多項式として整理する事を目標としていたが, 2013年度の小澤徹氏との共同研究によりYoungの不等式の誤差に関する積分表示が発見され, Youngの不等式に関する比較的容易で有益な等式が得られた. 2014年度の研究では, Young の不等式に関する等式の表現の応用し, Youngの不等式によって証明されるHolderの不等式に関する精密な誤差評価を得た. 冪乗型の非線型項を伴った半相対論的方程式の初期値問題の適切性の研究は, 冪乗型の非線型項を伴う半相対論的方程式の初期値問題の適切性と, 初期値のSobolev の意味での微分可能性との関係を明らかにする事を目的とする研究である. 2014年度の研究では, 未知函数の共役の自乗を非線型項とする半相対論的方程式の初期値問題の自乗可積分な函数の空間に於ける適切性, 適切性が不明であった未知函数と未知函数の共役から成る2次の羃乗型の非線型項と微分可能性の低い初期値とを伴う半相対論的方程式の初期値問題に対する弱い意味での非適切性, エネルギーが保存される3次以下の冪乗型の非線型項を伴う半相対論的方程式の初期値問題のエネルギー空間での適切性, 並びに2次以下の未知函数の絶対値の冪乗を非線型項とする, ゲージ不変とはならない半相対論的方程式の初期値問題の時間大域解の非存在に就いて成果を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Young の不等式に関する等式の表現の精密化及び, 冪乗型の非線型項を伴った半相対論的方程式の, 初期値問題の適切性と初期値の微分可能性との関係を研究している. Youngの不等式に関する等式の表現の精密化に関する研究は, Youngの不等式に対応する等式を具体的に書き下し, Youngの不等式の理解を精密にする事を目的とする研究である. Youngの不等式に関する研究の当初の目的は, 2013年度の小澤徹氏との共同研究によって達成され, 2014年度の研究によって, 2013年度の研究で得られた等式表現を応用し, Holderの不等式の誤差評価を与える事が出来た. 従って, Youngの不等式に関する等式の表現の精密化に関する研究は, 当初の計画以上に進展し目的を達成した. 冪乗型の非線型項を伴った半相対論的方程式の初期値問題の適切性の研究では, 2014年度に於いて, 2次の冪乗型の非線型項を伴う半相対論的方程式の初期値問題に対する時間局所的な適切性と初期値のSobolevの意味での微分可能性との関係を明らかにする事を目標としていた. 2014年度の研究では, 未知函数と未知函数の共役から成る2次の冪乗型の非線型項に対して, 初期値問題が時間局所的に適切となる初期値の微分可能性と解作用素の初期値に対する滑らかさが失われるという意味で初期値問題が非適切となる初期値の微分可能性との境界を発見する事が出来た. 初期値問題が適切となる初期値の微分可能性が, 弱い意味ではあるが明確になった為, 2014年度の研究目標は概ね達成された. 加えて, 2次以外の冪乗型の非線形項に対しても特定の条件下で初期値問題の適切性や時間大域解の非存在に関する成果を上げる事が出来た. 上記の様にいずれの研究においても当初の計画を概ね達成した.
|
今後の研究の推進方策 |
2015年度の研究では, 冪乗型の非線型項を伴った半相対論的方程式の初期値問題の適切性の研究を進める. 2014年度の研究では, 空間1次元に於ける未知函数と未知函数の共役から成る2次の非線型項を伴う半相対論的方程式の初期値問題に関して, Soboevの意味での微分可能性が乏しい初期値に対して, 解作用素の初期値に対する滑らかさが失われる事が判明した. 2015年度の研究では, 解作用素の滑らかさが失われる弱い意味での初期値問題の非適切性を踏まえ, 半相対論的方程式の初期値問題の非適切性を更に詳しく研究する. 初期値問題の非適切性に関しては, 解作用素の滑らかさが失われるという弱い非適切性に対して, 解作用素の初期値に対する連続性が失われる, 又は時間局所的な弱解が存在しないというより強い意味での非適切性が知られている. 最近の戌亥隆恭氏の研究では, 一般の空間次元に於ける未知函数の絶対値の冪乗を非線型項とする半相対論的方程式の初期値問題に対して, 尺度変換の意味で優臨界の状況に於いて, 時間局所的な弱解が存在しない事が示された. 戌亥隆恭氏の結果は, 2014年度の本研究で考案した半相対論的方程式の変形を用いるもので, 2014年度の本研究で得られた弱い意味での初期値問題の非適切性の意味を強める結果である. 戌亥隆恭氏の成果は尺度変換の意味で自然な結果ではあるが, 尺度変換の意味で劣臨界の場合でも, 未知函数の絶対値の冪乗を非線型項とする半相対論的方程式の初期値問題の時間局所的な可解性は不明であり, 上述の弱い意味での非適切性のみが判明している. 2015年度の研究に於いては, 戌亥隆恭氏の成果を踏まえ, 弱い意味での非適切性のみが判明している冪乗型の非線型項を伴う半相対論的方程式の初期値問題に対して, より強い意味での非適切性が得られるかを特に研究する.
|