研究課題
MAPKカスケードは、植物免疫において非常に重要な役割を果たしているが、受容体とMAPKカスケードを繋ぐ因子については全く明らかになっていない。申請者らはこれまでに、シロイヌナズナのキチン受容体であるCERK1とMAPKカスケードを繋ぐ因子として、Receptor-like Cytoplasmic Kinase (RLCK) であるPBL27を同定した。また、CERK1がキチン応答時にPBL27を直接リン酸化することでシグナル伝達を行っていることを明らかにした(Shinya et al. Plant J. 2014)。さらに、PBL27と直接相互作用するMAPKKKとしてMAPKKKaを同定することに成功しており、PBL27が受容体とMAPKカスケードをつなぐ重要な因子であることが示唆された。本年度は、PBL27によるMAPKKKaへのシグナル伝達機構を明らかにすることを目的として解析を進めてきた。in vitroにおけるリン酸化解析の結果、PBL27がMAPKKKaのC末端領域を特異的にリン酸化することが明らかになった。さらに、質量分析により、PBL27がMAPKKKaのC末端領域に存在する6つのアミノ酸をリン酸化することが明らかになった。これらのアミノ酸をアラニンに置換した変異遺伝子を導入した植物体では、キチンに応答したMAPKの活性化が低下した。以上の結果から、PBL27によるMAPKKKaのリン酸化が下流へのシグナル伝達に重要であることが明らかになった。また、これまでの知見から、MAPKKKaの下流にはMAPKKであるMKK4/5が存在していることが示唆された。そこで、MAPKKKaがMKK4/5をリン酸化するかどうかを明らかにするため、in vitroリン酸化解析を行った。その結果、MAPKKKaのキナーゼ領域がMKK4/5を直接リン酸化することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
PBL27がMAPKKKaのC末端領域をリン酸化することでシグナル伝達を行っていることを明らかにした。また、MAPKKKaがMAPKKであるMKK4/5を直接リン酸化することも明らかにし、キチン応答時における受容体からMAPKまでのリン酸化を介したシグナル伝達機構を明らかにすることができた。
シロイヌナズナのプロトプラストおよびタバコを用いた一過的発現系により、in vivoにおけるPBL27とMAPKKKaの相互作用解析、キチン応答時におけるMAPKKKaのリン酸化解析を行う。また、我々はPBL27のオルソログである、イネのOsRLCK185と直接相互作用するMAPKKKを同定することに成功している。そこで、OsRLCK185によるMAPKKKへのシグナル伝達機構についても解析を行う。
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The Plant Journal
巻: 79 ページ: 56-66
10.1111/tpj.12535