温度サイクル熱処理により誘起される異常粒成長の駆動力として、第二相析出によりマトリックス相中に形成される亜結晶粒界のエネルギーが大きく寄与していることを確定付けるため、組織中の亜結晶粒界エネルギーの大きさを決定する亜結晶粒界方位差が大小で異なる二種類の試料を作製し、異常粒成長挙動の違いを調査した。その結果、亜結晶粒界の方位差を増加する熱処理を施した試料では方位差が小さい亜結晶粒組織を有する試料に比べて顕著に異常粒成長速度が上昇することが定量的に示されたことから、亜結晶粒界のエネルギーが異常粒成長の駆動力として大きな役割を果たしていることが明らかとなった。 続いて亜結晶粒組織が形成される過程を理解するため詳細な組織観察や各種解析を行った。その結果、析出α相の組織形態に対応して亜結晶粒径が変化することなどが確認され、亜結晶粒界がα相の成長に起因して形成されることを明らかにした。また亜結晶粒界を構成する転位が、相変態に伴って異相界面に生じるせん断歪み成分を緩和する転位である可能性を示した。 さらに連続的異常粒成長現象を利用して粗大結晶粒を効率的に作製するための最適熱処理方法を検討した。異常粒成長速度の加速と異常粒発生数の低減の観点から、亜結晶粒界方位差の増加や集合組織の付与をはじめとして、サイクル熱処理の要所ごとで要求される組織が得られるよう熱処理条件を決定し、直径16mmの棒材で最大長さ400mmの巨大結晶粒を得ることができた。 サイクル熱処理により異常粒成長を誘起し結晶粒粗大化が得られる今回の手法は、熱処理のみで上述のような超巨大結晶粒を作製できるほか温度サイクル回数を増加することにより結晶粒径が連続的に増加することから、従来の単結晶もしくは粗大粒製造手法にはない優れた特徴を有していると言える。 以上の研究成果については、現在国際学術誌への投稿に向けて準備を進めている。
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