研究課題/領域番号 |
14J07401
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
原 百合恵 昭和女子大学, 生活機構研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 低酸素 / クエン酸 / 炎症 |
研究実績の概要 |
呼吸器疾患などにより身体が低酸素環境下におかれると、多血症となることが知られている。現在、多血症には対症療法である瀉血以外の有効な治療法がないため、新たな治療法や食事療法の確立が望まれる。本研究では、呼吸器疾患に伴う多血症、ならびに身体の低酸素状態が問題となる種々の疾患の食事療法を確立するための先駆けとして、低酸素曝露に対するラットの初期生体応答およびクエン酸の生理機能を中心に解析している。 本年度は、低酸素により誘導されると想定される炎症とクエン酸の炎症抑制効果について検討した。 ラットに2時間の低酸素曝露(酸素濃度10.5%)を行い、肝臓および骨格筋中の炎症マーカーをリアルタイムPCR法で測定した。また、血漿中の炎症マーカーをELISA法で測定した。その結果、遺伝子発現レベルでは肝臓および骨格筋での炎症は抑制されていることが明らかになった。また、血漿の炎症マーカーは検出限界以下であった。低酸素により炎症が誘導されるという定説とは相反する結果が得られたことから、呼吸器疾患患者における炎症は、低酸素そのものによるものではない可能性が示唆された。 クエン酸を投与したラットの血漿の炎症マーカーに有意な変化はみられず、クエン酸の炎症抑制効果は本条件では認められなかった。一方で、クエン酸の投与により一部の臓器の脂質過酸化が亢進したため、より詳細な検討が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呼吸器疾患に伴う多血症、ならびに身体の低酸素状態が問題となる種々の疾患に対する食事療法を確立することを目的とし、本年度は低酸素により誘導されると報告されている炎症と、クエン酸の炎症抑制効果についてラットを用いて検討した。 2時間の低酸素曝露ではラットの肝臓および骨格筋での炎症の誘導はみられず、健常なラットでは低酸素そのものが炎症を誘導しない可能性を示すことが出来た。クエン酸摂取による炎症抑制効果については、一部の臓器で脂質過酸化の亢進がみられ、相反する結果となった。しかし、呼吸器疾患の食事療法の確立に向けて重要な知見が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、低酸素曝露による炎症誘導およびクエン酸摂取による炎症抑制効果について検討した。その結果、2時間の低酸素曝露はラットの肝臓および骨格筋の炎症を誘導せず、健常ラットにおいては低酸素そのものは、遺伝子レベルでは炎症を誘導しない可能性が示された。また、クエン酸摂取による臓器の脂質過酸化亢進が明らかになり、呼吸器疾患に有効な食品成分として着目したクエン酸の新たな知見も得られた。 次年度は本年度予定していた低酸素曝露時の低酸素誘導因子(HIF)の変動をとらえることを最優先に検討を進め、低酸素により安定化するHIFと低酸素曝露に対するラットの生体応答との関連、およびクエン酸摂取の有効性を明らかにしたい。
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