研究課題
本研究では、高齢者の貧血と健康寿命の関連を検討するとともに、食生活面から高齢者の貧血予防策を明らかにすることを目的に、平成26年度は以下3つの研究課題を検討した。【課題1】地域在住高齢者1620名を対象に、貧血と介護保険認定・死亡リスクとの関連を縦断的に検討した。その結果、貧血無群(No Anemia)に比べた貧血有群(Anemia)の新規要介護認定に対するハザード比(95%信頼区間)は、1.90 (1.32 -2.76)であった。同様に、死亡に対するハザード比は、1.55 (1.01 -2.38) であった。このことから、貧血は要介護認定および死亡のリスクファクターとなることが示唆された。【課題2】地域在住高齢者の貧血を要因別(栄養性貧血・慢性炎症性貧血・原因不明の貧血)に分類し、貧血の要因を検討した。解析対象者550名のうち、113名(20.3%)に貧血がみられた。そのうち、栄養性貧血の割合は28名(24.8%)、栄養性以外の貧血では、慢性炎症性または腎性貧血が11名(9.7%)、原因不明の貧血が74名(65.5%)であった。【課題3】地域在住高齢者の貧血と食生活との横断的関連を検討した。その結果、食品摂取の多様性得点が高いほど、貧血ありのオッズ比が有意に低下した(p for trend=0.005)。このことから、多様な食品摂取は、高齢者の貧血予防につながることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
フィールドでのデータ収集および3つの研究課題の解析については、順調に進んでいる。さらに、得られた研究結果については国内および国際学会にて報告し、成果を残した。
平成26年度の研究結果より、地域在住高齢者における貧血の要因の多くは原因不明であり、貧血の要因を十分に特定できなかった。今後は対象者数を増やすとともに測定項目を追加し、高齢者の貧血の要因をより詳細に検討していく。また、食生活面からの貧血予防策の検討については、本年度行った分析で横断的関連はみられたものの、縦断的関連および食生活の評価方法(食品摂取多様性得点)の妥当性について今後検討する必要がある。さらに、本年度未達成であった「国民健康栄養調査からみた貧血の年次推移と背景要因の探索」については、データセットの構築および解析を進めていく予定である。
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整形・災害外科
巻: 57(11) ページ: 1441-1447