研究実績の概要 |
本申請者はこれまでに、高内皮細静脈 (High endothelial venules, HEV) 上のヘパラン硫酸がHEV上にケモカインCCL21を集積させ、リンパ球ホーミングを促し、免疫応答に寄与することを明らかにした。 リンパ球上のL-セレクチンと相互作用する、末梢リンパ節HEV上のL-セレクチンリガンドは、6-sulfo sialyl Lewis Xと呼ばれる特殊な糖鎖構造であり、これを持つ糖タンパク質をPNAdと呼ぶ。一方、パイエル板などの粘膜系リンパ組織のHEV上のL-セレクチンリガンドとしてMAdCAM-1が知られている。末梢リンパ節型HEVは様々な外的刺激によりその形質が変化する。具体的には、オキサゾロン塗布による抗原感作を行うと、所属リンパ節HEVはPNAdlow,MAdCAM-1highな粘膜組織型HEVとなった後に、再度PNAdhigh,MAdCAM-1lowな末梢リンパ節型HEVへ復帰することが知られる。このようなHEVの形質変化は免疫応答の時間的経過と一致することから、正常な免疫応答とHEVの可塑性は関連していると考えられる。しかしながら、このHEVの可塑性がどのような生理学的意義を持ち、どのような機構で制御されているか不明である。 近年の研究から、ヘパラン硫酸が細胞や組織の形質の変化に寄与することが報告されている。ヘパラン硫酸は、強い陰性電荷をもつグリコサミノグリカンであり、HEVでのヘパラン硫酸の機能はリンパ球へのケモカインの提示のみではない可能性を考えた。抗原感作に伴ってHEVの形質変化が起こることが報告されているが、その制御機構は明らかではない。細胞や組織の形質の変化に寄与するヘパラン硫酸をHEVで特異的に欠損するマウスを活用し、抗原感作に伴うHEVの可塑的な形質変化における、ヘパラン硫酸の機能を探索した。
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