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2014 年度 実績報告書

高内皮細静脈の可塑的な形質変化におけるヘパラン硫酸の機能解明

研究課題

研究課題/領域番号 14J07438
研究機関静岡県立大学

研究代表者

坪井 康一郎  静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2016-03-31
キーワード高内皮細静脈 / HEV
研究実績の概要

本申請者はこれまでに、高内皮細静脈 (High endothelial venules, HEV) 上のヘパラン硫酸がHEV上にケモカインCCL21を集積させ、リンパ球ホーミングを促し、免疫応答に寄与することを明らかにした。
リンパ球上のL-セレクチンと相互作用する、末梢リンパ節HEV上のL-セレクチンリガンドは、6-sulfo sialyl Lewis Xと呼ばれる特殊な糖鎖構造であり、これを持つ糖タンパク質をPNAdと呼ぶ。一方、パイエル板などの粘膜系リンパ組織のHEV上のL-セレクチンリガンドとしてMAdCAM-1が知られている。末梢リンパ節型HEVは様々な外的刺激によりその形質が変化する。具体的には、オキサゾロン塗布による抗原感作を行うと、所属リンパ節HEVはPNAdlow,MAdCAM-1highな粘膜組織型HEVとなった後に、再度PNAdhigh,MAdCAM-1lowな末梢リンパ節型HEVへ復帰することが知られる。このようなHEVの形質変化は免疫応答の時間的経過と一致することから、正常な免疫応答とHEVの可塑性は関連していると考えられる。しかしながら、このHEVの可塑性がどのような生理学的意義を持ち、どのような機構で制御されているか不明である。
近年の研究から、ヘパラン硫酸が細胞や組織の形質の変化に寄与することが報告されている。ヘパラン硫酸は、強い陰性電荷をもつグリコサミノグリカンであり、HEVでのヘパラン硫酸の機能はリンパ球へのケモカインの提示のみではない可能性を考えた。抗原感作に伴ってHEVの形質変化が起こることが報告されているが、その制御機構は明らかではない。細胞や組織の形質の変化に寄与するヘパラン硫酸をHEVで特異的に欠損するマウスを活用し、抗原感作に伴うHEVの可塑的な形質変化における、ヘパラン硫酸の機能を探索した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の中心的課題である高内皮細静脈(HEV)の可塑性を観察するため、末梢リンパ節型、粘膜関連リンパ組織型のHEVマーカーを活用し、経皮免疫後のHEVマーカーの変化を確認し、基本的な実験系の確立に成功している。
具体的には、高内皮細静脈の可塑性を誘導する最適な条件を設定するために、ハプテンを用いた免疫刺激を行った。マウス両前肢剃毛部にハプテンを塗布後、経時的に所属リンパ節である上腕リンパ節および、腋下リンパ節を採取し、凍結切片を作製し、末梢リンパ節型高内皮細静脈マーカーであるPNAdに対する抗体と、粘膜系組織型高内皮細静脈マーカーであるMAdCAM-1に対する抗体、すべての血管内皮抗原であるCD31に反応する抗体を用いた免疫組織染色を行った。染色像からCD31陽性血管内皮中のPNAd陽性血管内皮、もしくはCD31陽性血管内皮中のMAdCAM-1陽性血管内皮の割合を算出した。CD31陽性血管内皮中のMAdCAM-1陽性血管内皮の割合はハプテン塗布から7日目まで上昇することを確認した。CD31陽性血管内皮中のPNAd陽性血管内皮はハプテン塗布後4日目には減少し、7日には定常状態のレベルまで復帰することを確認した。さらに、申請者独自に樹立した抗PNAd抗体が活用できることを見出した。
現在、フローサイトメトリーを用いた評価系樹立をすすめており、期待通り研究が進展している。すでにリンパ節から高内皮細胞を精製する手法を確立しているが、この手法によりHEVでヘパラン硫酸を欠損したコンディショナルノックアウトマウスと野生型マウスから高内皮細胞を精製し、DNAマイクロアレイ解析によって発現遺伝子の違いについての予備的な結果を得ている。HEV可塑性と関連づけた研究を更にすすめ、高内皮細静脈の形質調節機構について新たな知見が得られることが期待される。

今後の研究の推進方策

ハプテン塗布したマウスリンパ節を、抗PNAd抗体および抗MAdCAM-1抗体を用いた免疫組織染色法によって染色し評価することで、高内皮細静脈の表面抗原の変動を解析してきた。当該手法では、高内皮細静脈の表面抗原の変化や、高内皮細静脈の形態にハプテン塗布がどのような影響を及ぼすのかを観察することが可能である反面、定量性に欠ける問題点を持つ。そこで、ハプテン塗布による高内皮細静脈の表面抗原の変動をより詳細に、より定量的に評価するために、フローサイトメトリーを用いた評価系樹立を検討している。具体的には、ハプテン塗布したマウスから経時的に回収したリンパ節を酵素消化することで、高内皮細静脈を単一細胞レベルまでほぐし、抗PNAd抗体および抗MAdCAM-1抗体で染色し、フローサイトメトリー解析を行う。これにより、高内皮細静脈の表面抗原の変動をより定量的に評価することができると考えられる。さらに、これまで確認した条件を参考に、高内皮細静脈の可塑性を誘導するさらに最適な条件を探索する予定である。
これと並行して、この高内皮細静脈の可塑性に関与すると推測しているヘパラン硫酸を高内皮細静脈で欠損したマウス、および野生型マウスから末梢リンパ節を採取し、高内皮細静脈をから抽出したRNAを用いてDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、ある特定の機能を持った遺伝子が発現変化することを明らかとした。今後、既に樹立している高内皮細静脈由来細胞株で当該遺伝子の機能解析を行う予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] オートファジー関連遺伝子Atg7は腸内細菌叢を制御し大腸炎を抑制する2015

    • 著者名/発表者名
      坪井康一郎、西谷麻予、今井康之、小松雅明、川島博人
    • 学会等名
      日本薬学会
    • 発表場所
      神戸医療大学
    • 年月日
      2015-03-25 – 2015-03-28

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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