研究課題/領域番号 |
14J07468
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
太田 緑 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 中心体複製 / Polo-like kinase 4 / 細胞生物学 |
研究実績の概要 |
本研究では中心体複製開始点における分子基盤を解明することを目的としている。特に、複製の初期に必須であるPlk4キナーゼ、STIL、HsSAS-6に注目して解析した。当該年度の研究実施状況は以下の通りである。 1) Plk4によるSTILリン酸化の検討とリン酸化部位の決定: in vitroリン酸化反応により、STILがPlk4の新規基質であることを見出し、質量分析、リン酸化抗体の作製および変異体解析により、STILのリン酸化部位を12カ所同定した。 2) リン酸化変異型STILの中心体複製への影響: リン酸化部位の変異型STILを作製し、ヒト培養細胞に発現させて、中心体複製に与える影響を検討した。その結果、ハエからヒトまで保存されたSTANモチーフ内の3つのアミノ酸をアラニンに置換すると中心体複製が阻害されることがわかった。 3) STILとHsSAS-6の相互作用の検討: STILとHsSAS-6の直接結合を、in vitro プルダウン法、in vivo共免疫沈降法を用いて検討した。その結果、Plk4によるSTILのリン酸化が、STIL/HsSAS-6の複合体形成を誘導することが分かった。また、その複合体形成にはPlk4によるSTILのS1061部位のリン酸化が必要十分であることが分かった。 4) 中心小体複製を1コピーに限る分子メカニズムの解析: 染色体を安定的に維持するには、娘中心小体のコピー数が常に1に限定されることが重要である。その分子メカニズムを調べるため、Plk4、STIL、HsSAS-6の中心小体局在を経時的に観察した。その結果、娘中心小体形成の前後でPlk4の局在がリング状からドット状に限局化されること、娘中心小体の形成開始自体が、他の部位から複数娘中心小体を形成することを抑制する負のフィードバック機構として働くことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト培養細胞をモデルとし、主に細胞生物学的、生化学的手法を用いて、中心小体複製開始の分子機構の解析を行い、進展が見られた。具体的には、中心小体複製に必須の因子であるPLK4/STIL/HsSAS-6における分子間相互作用、複合体形成、リン酸化制御の詳細を明らかにし、中心小体の土台部分であるカートホイール構造構築の分子レベルでの理解が進んだ。また、複製される新規中心小体の数が一つに限定される基本原理の一端を、高解像度イメージングを駆使することで提示することに成功した。以上の知見は、インパクトの高い海外科学雑誌に掲載され、関連分野における注目度、評価も非常に高い事が、最近参加した国際学会でも確認された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は中心小体複製を1コピーに限る分子メカニズムに関してより詳細に解析していく予定である。そのため、まず超解像顕微鏡を用いてPlk4、STILおよびHsSAS-6の中心小体へ局在を経時的に観察する。また、細胞周期阻害剤、Plk4のkinase阻害剤およびタンパク質分解阻害剤等を用いて、それらが3因子の局在に与える影響を解析する。さらに得られた局在パターンを定量的に解析し、数理モデルと組み合わせ、中心小体複製を1コピーに限定するメカニズムのモデルの構築を目指している。さらに、これまで見出して来た中心小体複製前後におけるPlk4の局在パターンや局在変換には、Plk4自身による自己リン酸化の関与が予想される。そこで、Plk4の自己リン酸化サイトをin vitroリン酸化反応と質量分析により同定し、その自己リン酸化がPlk4同士およびSTIL、 HsSAS-6との分子間相互作用にどのように影響を与えるかを生化学的な手法を用いて検討してく予定である。
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