研究課題/領域番号 |
14J07477
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石田 貴大 東京理科大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 直接数値計算 / 環状流 / 亜臨界遷移 / 大規模乱流構造 / 乱流熱伝達 |
研究実績の概要 |
前年度に妥当性を確認した直接数値シミュレーションコードを用い,スーパーコンピュータを利用して解析を進めた.熱伝達解析を含む二重円管内環状流れの大規模直接数値解析を行った.特に乱流遷移域に着目しているため,低レイノルズ数下でのレイノルズ数依存性の調査を行った.また,二重円管の形状は内円筒半径割る外円筒半径で定義される円筒比に依存することから,円筒比依存性に関しても調査した. 本研究では遷移現象,特に局在化乱流構造に着目して解析を行い,他の流れ場との類似性を調査した.その結果円筒比が小さい場合,円管内流れで観察されるパフに類似した流れ方向に局在化した構造が発生することを明らかにした.反対に大きい場合には,平面間流れで生じる乱流の縞状構造と同様のヘリカル乱流が発生することを明らかにした.また,その間の円筒比では流れ方向に局在化したヘリカル乱流であるヘリカルパフが現れ,パフとヘリカル乱流とを繋ぐことを示唆した.これらの新たな二重円管内流での遷移構造の発見により,遷移現象の包括的理解に貢献することができた.熱交換器応用を目指した熱伝達解析では,新たに発見した遷移現象が熱伝達特性に与える影響を調査し,遷移構造が乱流熱伝達率の維持に重要な役割を担うことを明らかにした. 直接数値計算での結果をより明確にするため,可視化実験を行い,円筒比が大きい場合に関して調査した.これにより,一方向からの撮影でヘリカル乱流が発生することを明らかにした.しかし,可視化用フレークと水との密度差などの要因により,フレークが遷移構造発生を妨げてしまっている結果となっているため,今後改善が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施の概要にて詳細を既述したように,前年度に作成した数値解析コードを用いて,大規模数値解析を実施することで遷移構造の変化を捉えることができた.また遷移構造が乱流熱伝達率に与える影響を明らかにした.これらの内容をもとに多数の国際学会への参加及びジャーナルへの投稿と成果を残すことができた.このように,数値解析による研究は当初の計画以上に進んでいる.また,スウェーデンでの短期留学を行うことで,多くの議論を通して現在の研究を発展させることができた.しかし,可視化実験に関しては可視化手法等問題点が多く残り,今後改善の必要がある.これによりおおむね順調に研究は進行していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
遷移現象を包括的に捉えるため,これまでに得られた結果を精査し,議論を進める.亜臨界遷移特有の空間的に局在化した大規模な乱流構造が環状流の円筒比の極限近くで生じることを明らかにした.両極限では環状流の系が円管内流れと平面間流れとみなすことができる.本年度は環状流で得られた結果と他の系で得られた遷移現象との結果を比較する.遷移レイノルズ数域において発生する秩序構造である遷移構造は円筒比の大きい二重円管から小さいものへと変えると,ヘリカルストライプ,ヘリカルパフ,パフと段階的に変化する.これは,周方向二次流れが抑制されることによると考えられるが,詳細な原因の解明にはいたっていない.従って,本年度はこれらの遷移構造が変化する要因を円筒比に関する境界周辺を解析することで明らかにする.各極限での遷移構造とその境界を明らかにすることが可能となれば,せん断流れ全体での亜臨界遷移課程の包括的理解に繋がるため,遷移現象統一理論の基盤を構築することを目標とする. 可視化実験により実証することで,研究課題を完遂する.現在までに,円筒比が大きい場合に二重円管の一側面からの撮影で遷移構造を捉えることが可能となった.しかし,可視化用フレークフレークが遷移構造発生を妨げてしまっている結果となっているため,可視化方法の改善を行う.最終的には,四個のカメラを同時に用い,全周方向での可視化を行う. 短期滞在を行ったフランス及びスウェーデンの研究者と議論を進め,滞在中において得られた成果もまとめて国際論文に投稿する.
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