研究課題
本研究の目的は印刷による二次元材料を用いた柔軟な論理回路の実現であり、材料及びデバイス両面を相補的に理解することによって、最終的には世界初の印刷型アンビエントエレクトロニクスを実現する。本研究目的を達成するために、本年度は以下の二つの項目に取り組んだ。1)様々な遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)材料の合成及びトランジスタの高性能化と極性制御化学気相成長法により4種類のTMDC単層膜(MoS2,MoSe2,WS2,WSe2)の合成技術を確立し、これらの単層膜を用いて、電解質と組み合わせたトランジスタの作製に成功した。TMDC材料の特徴である豊富な材料群を活かし、様々な材料でトランジスタを作製することにより、n型・p型・両極性トランジスタを実現できた。特に、これらの材料の電気伝導特性を詳細に調べることで、MoS2では高い電子移動度を有するn型材料として、また、WSe2は高い正孔移動度を有するp型材料として優れた伝導特性が明らかとなった。さらに金微粒子の添加によるドーピング技術も開発し、例えば、WSe2ではドーピングにより正孔移動度が100 cm2/Vsを達成できた。以上の結果より、今後は異種材料を組み合わせた高性能な論理回路の実現が期待できる。2)TMDC単層膜の転写技術の確立及びプラスチック基板上でのデバイス作製合成した大面積TMDC単層膜を液相プロセスにより、様々な基板上に転写する技術を確立した。特に、転写前後で顕微・光学特性及び電気伝導特性を評価することで転写条件の最適化を行った。最終的には、極めて薄いプラスチック基板上に合成膜を転写し、高い柔軟性を有するトランジスタ作製が可能となった。転写後のデバイス性能の向上が今後課題であるが、本材料を用いた柔軟な論理回路実現に向けた基盤技術が構築できた。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題の目的達成に向けて、本年度の達成予定は、様々な遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)材料の合成技術の確立及びそれらを用いたトランジスタの作製と評価であった。これに対し、本年度は当初の研究予定を早々に達成したことに加え、トランジスタの高性能化に向けたドーピング技術の開発にも成功した。さらに合成した材料を任意の基板上に転写する技術も確立し、当初の予定であった合成基板上での評価のみならず、プラスチック基板上においても様々な材料のトランジスタ作製と評価を可能にした。以上により、当初研究目的に対し、本年度は大きな進展があった。
今後は、本年度確立した二次元材料の合成技術、トランジスタ作製技術及び転写技術を基盤として、まず、異種材料を組み合わせた高性能な論理回路の実現を目指す。次に、現状手作業で行っている転写プロセスにスタンプによる印刷技術を導入し、成長基板上から印刷法により様々な基板上にデバイスを作製する技術の確立を行う。また、転写過程において、同一基板上に様々な材料を大面積集積する技術の開発にも取り組む。最後に、上記二つの技術を組み合わせることで、自由自在にプラスチックやゴム基板上に二次元材料を転写し、優れた論理回路の作製を実現する。特に、技術開発・最適化のみならず、作製したデバイスの物理的な特徴も調べることで、今後、本材料を用いたデバイス応用に向けた新たな知見や指針も検証したい。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 1件)
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