研究課題/領域番号 |
14J07485
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
蒲 江 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 二次元材料 / 電気二重層 / 論理回路 / フレキシブルエレクトロニクス / トランジスタ / 光電変換 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は二次元材料を用いた柔軟な論理回路の実現であり、材料及びデバイス両面を相補的に理解することによって、最終的には世界初の印刷型アンビエントエレクトロニクスを実現する。上記の目標を達成するために、本年度はこれまでの研究で構築した遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)材料の大面積な薄膜合成技術と電解質を用いた素子作製技術を基に、高性能なCMOS論理回路及び柔軟な回路素子の実現に取り組んだ。 まず、高速に駆動する論理回路作製を目指した素子構造の最適化を行った。実験と計算の両面からインピーダンス測定を定量的に検証することで構造最適化を行い、高周波デバイスに向けた素子作製の手法を見出した。 次に、構築した素子構造を基に、化学気相成長(CVD)により合成した様々なTMDC単層膜を用いて論理反転回路であるCMOSインバータを試作し、優れたスイッチング性能を実現した。特に、スイッチング特性を決める電圧ゲインというパラメータでは、二次元材料を用いたインバータにおいて最高の値を示した。また、ノイズに対する安定性や消費電力等のパラメータでも、二次元材料では極めて優れた特性を実現した。さらに、プラスチック基板上でも同様のデバイス作製を行い、直径1mm以下に曲げても安定に駆動する高柔軟性を有する論理回路の試作にも成功した。 最後に、柔軟な回路素子の電源(エネルギーハーベスティング)技術に向けた、光電変換素子の作製にも取り組んだ。CVD合成したTMDC単層膜の基礎的な光学特性評価を行い、得られた知見を基に受光素子の試作を行った。電解質を用いた特徴的な手法を導入することで、市販のシリコンフォトダイオードに匹敵する高い受光感度を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的達成に向けて、本年度の達成予定は、化学気相成長法で合成したウエハースケールの遷移金属ダイカルコゲナイド単層膜を用いた論理回路の作製であった。これに対し、本年度は早々に転写技術の確立により、異種原子層膜を用いたCMOS論理回路を実現し当初の研究予定を達成した。また、作製した論理回路の高性能化に向けた構造最適化も行い、最終的には本材料では初めて柔軟な基板上(プラスチック上)に高性能な論理回路の試作に成功した。さらに、将来的なウェアラブル・コンピューティングに向けての柔軟な回路素子のみならず、その電源(エネルギーハーベスティング)技術に向けての本材料の応用可能性も探索した。以上のように、当初の研究予定に対し、本年度は大きな進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまず、柔軟性・伸縮性を有する電子素子の電源(エネルギーハーベスティング)技術として、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)を用いた熱電変換素子(および光電変換素子)の作製を行う。昨年度までに実現した原子層CMOS論理回路と熱電変換素子を組み合わせることで、ウェアラブル・コンピューティングの基礎となる電源と駆動回路の同時構築を目指す。 次に、TMDC材料を加工および印刷する技術を確立する。具体的には、グラフェンに適応されているプラズマ加工とPDMSスタンプによる転写技術を適用する。これらの手法をTMDC材料に適用した例は未だなく、転写条件や試料へのダメージ等を最適化することで本材料において世界初となる印刷技術の構築を行う。 最後に、柔軟性や伸縮性を有する基板上に、確立した印刷法を用いたトランジスタとエネルギー変換デバイスの作製技術を確立する。さらに、薄膜加工技術を用いて、電極・半導体・絶縁膜のパターニングを行い、基板上にウエハースケールでの電源(熱電変換モジュール)とCMOS論理回路の集積を試みる。以上により、最終的には、完全印刷型の柔軟性・伸縮性を有する電源と駆動回路の同時実現を目指す。
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