研究課題
Babesia gibsoniが引き起こす犬バベシア症に対しアトバコンを用いた治療方法は有効であると考えられる。アトバコンは広い抗原虫活性を持ち、マラリア原虫に用いた際ミトコンドリア膜電位を崩壊させ、さらにピリミジン合成に必須であるdihydroorotate dehydrogenase(DHODH)活性の抑制を起こすことが報告されている。アトバコンを犬バベシア症に用いた際、投与中止後に再発し、その原虫はアトバコンに対する感受性が低下することが過去の研究によって明らかとなった。この原虫は推定標的部位であるミトコンドリアチトクロームb領域にアミノ酸置換を伴う一塩基多型M121Iを有することが報告されている。過去の研究においてこのM121Iを有する原虫はアトバコン暴露による選択性増殖であると考えられており、自然感染例の中でアトバコン治療前からM121I原虫が存在したとの報告もある。ミトコンドリア膜電位の変化にもこのM121Iが関与すると考えられるが、そもそもこの原虫が自然界にどの程度存在するのか、分布は明らかとなっていない。本研究では遺伝子診断によりB. gibsoni陽性と診断された犬の血液から抽出したgDNAを用いて、ミトコンドリアチトクロームb領域のアミノ酸置換をダイレクトシークエンス法にて調査した。過去に確立したallele-specific real-time PCR法により、gDNA中のM121Iを示す遺伝子の割合を算出することができるため、その率をM121I保有率として算出した。M121Iの検出頻度ならびにその保有率を調査し、アトバコン耐性原虫の全国的な分布を明らかにする。アトバコンに対する感受性が低下している原虫の存在率を調べることは、今後アトバコンを中心とした治療方法の確立を目指す際、有益な情報となる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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