研究実績の概要 |
小員環を有するステロイド化合物の合成を行い、さらにビタミンD受容体転写活性化能とエストロゲン受容体α及びβの転写活性化能を、ルシフェラーゼレポーターアッセイによって評価した。その結果、ナチュラルリガンドであるカルシトリオールよりは弱いものの、スピロ三員環や四員環を導入した化合物が、ある程度のビタミンD受容体転写活性化能を持つことがわかった。また小員環を導入することで、ビタミンD受容体転写活性化能のefficacyの増大が見られた。この結果は、ビタミンD受容体のcoactivatorの結合を促進、あるいはcorepressorの解離を促進することで高いefficacyを示したと解釈できる。以上のように、剛直な配座を持つ小員環の導入によってefficacyの増大が見られ、当研究グループの方法で容易に構築可能な小員環による側鎖固定化が、生物活性分子の活性の増大に有効である可能性が示唆された。 また本研究過程で、パラジウム触媒を用いた縮環シクロブテンの環拡大反応を偶然見出した。反応機構を詳細に検討したところ、この反応は熱的電子環状反応によって一時的にのみ生成するcis,trans-シロキシジエン中間体を経由していることがわかった。この短寿命中間体は面性不斉を有しており、不斉記憶という興味深い現象を確認した。すなわち、原料のシクロブテンの不斉情報が短寿命中間体の面性不斉に保存され、生成物の中心性不斉に転写されることを見出した。
|