研究課題
発達中の小脳プルキンエ細胞において、生後8日目前後に樹状突起が1本化する過程で、シナプス入力がどのように樹状突起の形成を制御するのかを検討した。この時期には、プルキンエ細胞に投射する主な興奮性入力軸索である登上線維および平行線維も、シナプスを形成成熟させる。そこで、これらのシナプスの形成の有無が、プルキンエ細胞樹状突起の退縮あるいは伸長を決定づけるのではないかと考え、この仮説を検証した。まず、すべての登上線維に蛍光蛋白質YellowCameleonを発現するマウスを用いて、プルキンエ細胞樹状突起形成過程の登上線維を観察したところ、樹状突起1本化過程においては、登上線維は主にプルキンエ細胞の細胞体へ投射しており、樹状突起へはほとんどシナプスを形成していないことが明らかになった。したがって樹状突起における登上線維シナプスの役割は否定された。一方、プルキンエ細胞への平行線維シナプスの影響に関し、同シナプスが顕著に減少するCbln1ノックアウトマウスを利用してその具体的役割を検討したところ、生後14日目以降においてはプルキンエ細胞樹状突起の形態を制御することが示唆された。また、プルキンエ細胞の神経活動が樹状突起形態を制御する分子機構を検討した。プルキンエ細胞において神経活動を抑制するためKir2.1を過剰発現させると、樹状突起1本化が抑制される。一方、Kir2.1と同時に、CaMK2alphaの恒常活性型変異体を過剰発現していれば、樹状突起1本化が正常に起きることが明らかになった。したがって、CaMK2alphaが、神経活動の下流で働くことが、樹状突起1本化に必要であることが示唆された。これらの研究成果から、プルキンエ細胞樹状突起の形成における、シナプス入力や、神経活動の役割とその分子機構を明らかにすることができた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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The EMBO Journal
巻: 36 ページ: 1227-1242
10.15252/embj.201695630