研究課題
本年度も、昨年度に引き続き鉄系超伝導体 Fe(Se,Te)及び BiS2 系物質の研究を行った。鉄系超伝導体 Fe(Se,Te)については、昨年度の分解光電子分光のデータの解釈のため、第一原理計算を行った。計算により、Fe 3d xy/yz の軌道分裂がスピン軌道相互作用由来である可能性がある事を発見した。また。電子相関が正方格子上での yz/zx 軌道の異方性や、スピン軌道相互作用による xy±iyz タイプのスピン揺らぎを引き起こしている可能性を見出した。一方で、BiS2 系物質については、混合原子価を有する EuFBiS2、CeOBiS2 について角度分解光電子分光実験を行った。EuFBiS2 については、高エネ研 PF の BL-28A にて、Eu 4d-4f の共鳴実験を行いEuの原子価状態を特定した。イタリアの Elettra 放射光施設の Spectromicroscopyビームラインにて、位置分解光電子分光を 行ったところ、金属相と絶縁相を単一の結晶から観測し、電子状態が空間的に相分離している事を発見した。 第一原理計算を用いて金属相絶縁相それぞれにおけるバンド構造や価 電子帯の光電子分光スペクトルを再現する事に成功した。同様に、CeOBiS2 系にも Spectromicroscopyビームラインにて位置分解 角度分解光電子分光実験を行った。そして、EuFBiS2 と同様に、金属相と絶縁相が共存している事がわかった。 しかし、EuFBiS2 との大きな相違は、系の一様な部位に金属相と絶縁相が出ているか否かである。EuFBiS2 は、 一様な劈開面上に金属相と絶縁相が存在しているのに対し、CeOBiS2 では、一様な劈開面上は絶縁相であるが、 一様でない部分に金属相が出現した。これは、CeOBiS2 が EuFBiS2 よりも小さい local atomic disorderを有する事に起因すると考えられ、ステップ等が出現する際に一 様な部位よりわずかな大きな圧力がかかり、一様な部位と異なる局所構造が誘起されたと推測できる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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PHYSICAL REVIEW B
巻: 95 ページ: 035152-1~5
10.1103/PhysRevB.95.035152
PHYSICAL REVIEW B Rapid Communications
巻: 94 ページ: 081106-1~5
10.1103/PhysRevB.94.081106