研究実績の概要 |
平成26年度に引き続き、COBE衛星に搭載された観測装置Diffuse Infrared Background Experiment (DIRBE)の全天マップを用いて近赤外線の宇宙背景放射と銀河拡散光の研究を行った。その目的は今まで無視されてきた成分である銀河拡散光を評価した上で、宇宙背景放射を再測定することである。近赤外線の1.25、2.2μmの波長において、Two Micron All-Sky Survey (2MASS)のデータを用いて星光を正確に評価した結果、高銀緯領域で銀河拡散光が検出された。これは以前のDIRBEチームの解析では得られなかった成果である。また、宇宙背景放射の輝度は既知の銀河の積算光の数倍に達し、謎の放射成分の存在を示唆する。この結果をSano et al. 2015, ApJ, 811, 77として出版した。また、3.5、4.9μmの波長域ではWide-field Infrared Survey Explorer (WISE)によって得られた全天の星のデータを用いて星光の寄与を評価した。その結果、高銀緯領域において銀河拡散光が検出され、熱放射に寄与する非常に小さいダストが全ダスト質量に対して数%以上存在することを示した。また、宇宙背景放射の輝度は既知の銀河の積算光と同程度になった。この成果をSano et al. 2016, ApJ, 818, 72として出版した。さらに、1.25、2.2μmにおいて銀河拡散光の銀緯依存性を見出だした。これは星間ダストに前方散乱特性があると生じる現象であり、観測値と星光散乱モデルを比較して得られた前方散乱特性は、従来のダストモデルに比べて大きくなった。その原因として散乱光成分に加えて熱放射成分の存在が示唆される。この結果をSano et al. 2016, 821, L11として出版した。
|