研究実績の概要 |
すばるディープフィールドに存在するz~1.47と1.62の118個の[OII]輝線銀河に対して、星形成領域の星間電離ガスの物理状態を調べた。すばる望遠鏡のFMOSを用いて取得した近赤外線スペクトルから、静止系可視領域の主要な輝線(Hβ,[OIII],Hα,[NII],[SII])を検出し、その輝線の光度および強度比から、イオン化パラメーターを明らかにしている。本研究の興味深い点は、z~1.5の典型的な星形成銀河が強い[OIII]輝線を放射していることを明らかにしたことである。大部分の銀河では、[OIII]輝線は[OII]輝線よりも強い。また、星質量が大きくなるにつれて、[OIII]/[OII]が小さくなるという相関関係が得られた。したがって、z~1.5の星形成銀河は、近傍銀河と比べて高いイオン化パラメーターを持ち、かつ、小質量銀河ほどより高いイオン化パラメーターを持つことが明らかになった。高いイオン化パラメーターをもつ要因として、輻射場の違いの可能性が大きいと考えられる。つまり、遠方の小質量銀河ほど、星形成活動が活発で、O型星などの寿命が短い大質量星が輻射場に大きな影響を与えていることが示唆される。 もう一つの研究として、z=2.53の電波銀河の周りの原始銀河団に対して、ハッブル宇宙望遠鏡のACSおよびWFC3カメラを用いて、2014年7月から8月にかけて地球10周分の観測を行った。ハッブル宇宙望遠鏡のデータの強みは、地球大気のゆらぎの影響を受けないことによる空間解像度の高さである。原始銀河団に存在する星形成銀河の形態を調べたところ、約40%の銀河がクランプ状の形態をしていることが明らかになった。一方で、星形成をすでに止めた銀河のほとんどは、1成分のプロファイルで表すことができる比較的単純な形態をしている。
|