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2014 年度 実績報告書

ナチュラルヘルパー細胞の分化機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 14J07705
研究機関横浜市立大学

研究代表者

古賀 諭  横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2016-03-31
キーワード免疫学 / 細胞分化
研究実績の概要

本年度は、NH細胞の分化機構を解明するため、NH細胞の特異的分化に重要な環境因子の特定を行った。
これまでNH細胞の分化にはIL-7とNotchシグナルが必須であることを明らかにしているが、その他のサイトカインによる影響に関しては明らかになっていない。そこで、胎仔肝臓からCommon Lymphoid Progenitor(CLP)を 回収し、IL-7に加え、様々なサイトカイン刺激下でTSt4-DLL1 stromal cellとの共培養を行った。その結果、いずれのサイトカインもNH細胞の分化が促進することはなく、このことからNH細胞の分化にはIL-7のみが重要であることが示唆された。
IL-7とNotchシグナルはT細胞の分化にも重要であることが知られていることから、これらの刺激がどのようにT細胞またはNH細胞への分化を促進するのかを調べるため、まず、IL-7の濃度とNotchシグナルの強さ、長さに着目した。TSt4-DLL1ストローマ細胞上で、濃度の異なるIL-7刺激下でCLPを培養したところ、低濃度のIL-7刺激下ではT細胞へ優位に分化する一方、高濃度のIL-7刺激下ではNH細胞へ優位に分化した。次に、Notchシグナルの強さをDoxycyclin依存的に調節することが可能なTSt4 Tet-off DLL1ストローマ細胞上でCLPを培養したところ、CLPが強いNotchシグナルを受け取るとT細胞へ優位に分化するのに対し、弱いNotchシグナルをではNH細胞へ優位に分化した。更に、Notchシグナルを受け取る長さにおいても検討を行ったところ、Notchシグナルの長さの違いがT細胞、NH細胞への分化を制御することが明らかになった。
以上の結果からIL-7濃度の違い、Notchシグナルの強さ、受け取る長さの違いがNH細胞の特異的分化に重要な環境因子であることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、以下の2点を目的として研究を行った。
A.NH細胞の分化、増殖に重要な環境因子の特定
CLPとstromal cellとの共培養実験から、IL-7の濃度、Notchシグナルの強さ、受け取る長さがNH細胞の特異的分化に重要な役割を果たす環境因子であることを明らかにし、上記の目的を達成することが出来た。
B.NH細胞特異的な前駆細胞の同定
本年度、NH細胞を含めたinnate lymphoid cell(ILC)の特異的前駆細胞(ILCP)の同定に関して報告された(Klose CS et al. Cell. 2014 157(2):340-56. Constantinides MG et al. Nature. 2014 508(7496):397-401.)。本研究においても、ILCPがT細胞やB細胞といった獲得免疫に働くリンパ球へは分化しない一方、NH細胞や他のILCには分化することを確認した。現在、IL-7の濃度、Notchシグナルの強さ、受け取る長さの違いによりILCPから各ILCへの分化に影響を与えるかを検討中である。

今後の研究の推進方策

今後は以下の点に関して研究を行い、NH細胞の分化機構の全容を明らかにする。
①NH細胞分化における特異的遺伝子を明らかにする
NH細胞分化に働く特異的遺伝子を同定するために、NH細胞分化培養システムを用いて、CLP、ILCPから分化、培養させた各培養段階の細胞を継時的に回収し、それぞれの細胞分画から得られたRNAサンプルを用いてRNA-Seqによる遺伝子発現解析を行い、前駆細胞からNH細胞へ分化が進むにつれ、発現上昇、低下がみられる遺伝子を選別する。研究計画の時点では、CLPから分化してくる細胞はNH細胞以外にもT細胞や他のILCも含まれるため、NH細胞のみの遺伝子発現を検出することが難しいという問題があった。しかしながら、本年度NH細胞の特異的分化に重要な環境因子を特定することが出来たので、この分化誘導条件でCLP又はILCPを分化、培養させることでNH細胞特異的分化に働く遺伝子発現を追うことが可能であると考えられる。
②NH細胞がどこで分化、成熟、維持されるのかを解明する
NH細胞の分化に重要な環境因子は明らかになったが、これらの因子が生体内のどこの組織で作用し、NH細胞への分化を促進させるのかは明らかになっていない。NH細胞は骨髄で初期分化し、胸線を経由せずに脂肪組織FALCに移動すると考えられる。骨髄、FALCがNH細胞分化に関わるかどうかを明らかにするため、IL-7やNotchリガンドが骨髄、FALCで発現しているかについて免疫組織化学法を用いて確認する。更に、ILCPがIL-7、Notchリガンドの発現周囲に存在するかをILCPの発現マーカーを用いて調べることで、NH細胞の特異的分化の場の特定を試みる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] NotchとIL-7シグナルバランスにおけるリンパ球運命決定機構の解明2015

    • 著者名/発表者名
      古賀 諭
    • 学会等名
      第25回 Kyoto Tcell conference
    • 発表場所
      京都大学芝蘭会館
    • 年月日
      2015-05-16 – 2015-05-17
  • [学会発表] Crucial role of IL-7 and Notch signaling in natural helper cell development2014

    • 著者名/発表者名
      古賀 諭
    • 学会等名
      第43回 日本免疫学会学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2014-12-10 – 2014-12-12
  • [学会発表] ナチュラルヘルパー細胞の分化機構解明2014

    • 著者名/発表者名
      古賀 諭
    • 学会等名
      第24回 Kyoto Tcell conference
    • 発表場所
      京都平安ホテル
    • 年月日
      2014-05-16 – 2014-05-17

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公開日: 2016-06-01  

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