研究課題
前年度までは、光応答性部位として光2量化反応を示すスチルベンを導入した分子の溶液中における自己集合と光応答性について研究し、僅かな光刺激で螺旋ファイバーの巻方向が反転することを見出した。非常に新規性が高かったため、世界屈指の学術論文誌であるNature Communications誌に掲載された。今年度は、指向性の高い多重水素結合部位が導入されたπ共役化合物の特異な自己集合挙動に着目した。この化合物は相補的水素結合により環状の超分子(超分子マクロサイクル)を形成し、それが積層することでナノシリンダー状の分子集合体を形成することが原子間力顕微鏡(AFM)観察により明らかになった。興味深いことに、この分子構造を僅かに変化させることで、集合プロセス、ナノ構造、発光特性が劇的に変わることがAFM及び分光スペクトルにより判明した。これらの測定に加え、2次元X線構造解析により、分子構造と集合プロセスの相関を見出し、分子集合における重要な知見を得た。さらに、この分子に光応答性を示すアゾベンゼンを導入したところ、光照射によって集合が開始される系が構築された。その結果、光照射によって作られたファイバー状の集合体は、加熱溶液の冷却によって作られたものと比べて、長さが短くなおかつ揃っていた。これは、光照射により集合初期における核形成過程が変化し、新たな集合経路が導かれたためであると考えられる。今年度得られた2つの成果はすでに学術雑誌に掲載済みである。今後は、光によって動的に制御可能な分子集合体を重点的に研究し、光によって導かれる未知の集合構造の機能を引き出していく予定である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
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