研究課題/領域番号 |
14J07746
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
斎藤 達也 東京農工大学, 農学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 外来水生植物 / 植物群集 / 生態影響 / 河川水辺 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、河川水辺植物群集の存続可能性と再生可能性に対する外来水生植物の非線形な影響とその機構を解明し、水辺植物群集の適切な保全および復元対策に必要な情報を提示することである。調査地は、外来水生植物の侵入が著しい多摩川中流域の流水辺とした(東京都府中市、国立市、日野市)。外来水生植物であるチクゴスズメノヒエ(イネ科)を研究対象種とした。本年度は、実施計画に基づき以下の調査・実験を行った。 1. 水辺植物群集の存続に及ぼすチクゴスズメノヒエの影響を明らかにするため、多摩川中流域流水辺のチクゴスズメノヒエが優占する区画から在来種が優占する区画において植生調査を行った。 2. チクゴスズメノヒエの量の増加が水辺植物群集の更新に影響を及ぼすかどうかを実験的に検証するため、チクゴスズメノヒエの移植密度を操作した競争実験を開始した。 3. 水辺植物群集の再生可能性に対するチクゴスズメノヒエの影響を検討するため、多摩川中流域流水辺のチクゴスズメノヒエが優占する区画から在来種が優占する区画の埋土種子集団を調査した。 1と3の結果より、調査地である多摩川中流域の流水辺は外来植物に著しく優占される一方で、絶滅危惧種であるカワヂシャを含む在来植物種のハビタットでもあることが確認された。以上の調査・実験は、2か年に渡ってモニタリングを行う必要があり、成果は来年度に取りまとめる。特に、チクゴスズメノヒエの量と地上部植物群集および埋土種子集団との間の非線形関係を抽出するための統計解析を試みる予定である。本年度行うことができなかった外来水生植物の除去実験と在来植物種の被陰試験は、来年度実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
室内実験を行う予定であった東京農工大学府中キャンパス内の大型ビニールハウスが2014年2月の大雪により壊れたため、室内実験の開始が遅れた。現在は、東京農工大学府中キャンパス栄町圃場に新たに設置した簡易ビニールハウスおよび東京学芸大学内の温室にて実験を遂行している。また、実施計画では対象種であったオランダガラシの多くの個体が2014年6月の出水により消失したため、野外調査の開始が遅れた。オランダガラシの消失のため、本年度では、調査対象種を外来水生植物であるチクゴスズメノヒエとした。チクゴスズメノヒエは国内外の水辺植物群集に影響を及ぼすことが懸念されている。加えて、実験を行い易いサイズであり(植物高50㎝前後)、強健で栽培もしやすい。そのため、チクゴスズメノヒエは本研究計画目的の達成に適切な種と判断された。調査および屋内実験については、現在順調に進行している。 野外調査および屋内実験の遂行がやや遅れたため、当初予定していた国内学会での発表を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、まず昨年度に開始した野外調査および室内実験のモニタリングを秋期まで継続し、その結果を1本の論文としてとりまとめ、冬期をめどに投稿する予定である。同様の内容を基に、昨年度実施する予定であった日本生態学会での研究発表を実施する。 また、野外におけるチクゴスズメノヒエの除去実験、チクゴスズメノヒエ優占区画内への在来種種子の播種実験、在来植物種実生の耐陰性試験を本年度秋期から開始する予定である。
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