褐色矮星の3次元大気構造の解明を目標に、(1)Subaru/MOIRCSで取得した多波長同時分光モニタリング観測により取得したデータから褐色矮星の3次元大気構造の抽出を目指し、(2)また、褐色矮星の大気構造に大きな影響を与えるダストの大気中での生成消滅過程の詳細を調査し、その過程で大気モデルの改良も行った。また、(3)HSC-SSPにおいてプロジェクトを立ち上げ、褐色矮星の新規発見を目指した。
(1)Subaru/MOIRCSで取得した多波長同時分光モニタリング観測:2016年秋季に行った観測およびデータ解析の結果、今回の観測データからは、観測装置由来の原因(要求値より低い装置のポインティング精度や、装置自身の大きな変動)により、褐色矮星自身のスペクトル変動のみの抽出が困難であることが判明した。そのため、今回得られた結果をもとに観測手法的改善を検討した(2017年春季天文年会にて発表)。 (2)褐色矮星大気中のダストサイズ:褐色矮星の大気中のダストのサイズに着目し、ダストサイズが大気構造やスペクトル形状に与える影響、およびダストサイズと温度などの他物理量との相関関係を明らかにした(論文執筆中)。この過程で、ダストサイズをフリーパラメータとして扱えるよう計算コード・システムを改良した。 (3)Subaru/HSCのプロジェクトにおける褐色矮星候補天体の探査:Subaru/HSCのプロジェクト「HSC Project 221: Hunt for faint and distant brown dwarfs」を立ち上げた。HSC-SSPデータから色-色図を作成し、褐色矮星候補天体を探査した。また、HSC-SSPデータから個数密度を導出し過去の観測やモデルとの比較を行った結果、理論モデルとほぼ一致することを示した(論文執筆中)。
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