研究実績の概要 |
平成27年度は国際中欧・東欧研究協議会第9回世界大会でのパネル「III-2-1 Putin’s Asia Pacific Policy: New Challenges to the US and China?」の組織と報告に力を入れた。 パネルの報告者であるナターシャ・クールト(キングス・カレッジ、英国)はロシア極東情勢の観点から中ロ関係全般について報告し、もう一人の報告者Ik Joong Youn(Hallym University, 韓国)は金正恩体制下のロシア-北朝鮮関係について報告した。これらの報告が北東アジア情勢に焦点を充てていたことを考慮し、報告者は南シナ海における中国、ベトナム、ロシアの三角関係を視野に入れた報告を行った。研究報告「What is the Role of Russia in the Growing Regional Tensions between China and Its Neighbors?」では、2014年のロシアによるクリミア併合が及ぼす影響という観点から中ロ関係を論じた。2014年3月に国連安保理と総会で行われた、クリミアの国民投票に関する2つの決議を中国が棄権したことから、新疆やチベットで分離主義の問題を抱える中国が、ロシアと西側のどちらも支持せず、実利的な関係を維持しようとしていることを指摘した。一方で、クリミア併合後にロシア中央政府が発表した公式文書や声明、ウラジオストクへの自由港制度の導入などから、ロシア-ウクライナ紛争がロシアのアジア太平洋政策にとって特に経済面で追い風となっていると評価した。また、プーチン政権が欧米諸国との対立を深めるなか、中国やベトナムなど非西欧諸国は、ロシアと欧米、ロシアとウクライナの間でバランスをとりつつ、経済的利益を確保し、ロシアとの防衛分野での協力を進めようとしていることを指摘した。
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