研究実績の概要 |
現在まで、免疫系複合体タンパク質MHCの動態計測研究として2013年度の実験でMHCへ取り込まれた長さの異なるpepであるp52-61(10残基),p48-61(14残基)にラベルされた金ナノ結晶とフルオレセイン(蛍光体)それぞれのダイナミクスを X線1分子追跡法(Diffracted X-ray Tracking; DXT)と蛍光寿命法(蛍光異方性測定)を用いて計測した。2014年度はこれらのデータ解析を主に行い、論文投稿へのデータ整理を行った。本研究はBiophysical Journal 108, 2, 350-359 (2015)に掲載された。 一方、共存型DXTでは主に過飽和溶液(無機、タンパク質材料系)を対象に計測し、この結果より、無機材料の酢酸ナトリウム過飽和溶液(6.4 M)中に共存した金ナノ結晶の動態には少なくとも2つの異なる運動モードが存在することが明らかになった。本結果は単に局所的な粘性差を反映しているのではなく、コントロール実験(層分離実験や金ナノ結晶の共存確認実験)などの結果より、高粘性部分(溶質の集合体)による異方的な極めて微小な圧力が生じていることがわかった。 また、タンパク質系材料では主にHen egg white lysozymeを対象に測定したところ、結晶化準安定状態における溶液状態には無機材料系のそれと同様な異なる運動モードを確認することにも成功した。またその値は無機材料系よりも10倍程度低い値であった。 このような新規パラメータの算出は現在まで未知であった過飽和溶液が安定に維持される特性や結晶化の前段階である核形成プロセスの詳細な理解に繋がる可能性があると考えられる。
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