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2014 年度 実績報告書

移植肝生着に寄与する分子の探索と新規治療戦略の開発に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 14J07845
研究機関京都大学

研究代表者

新家 遥  京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2016-03-31
キーワード急性拒絶反応 / 生体肝移植 / 小児移植 / マイクロアレイ / バイオマーカー
研究実績の概要

生体肝移植術後における合併症発症は患者の予後を左右する重大な問題である。中でも急性拒絶反応は、タクロリムスをはじめとする免疫抑制薬を使用しているにも関わらず発症頻度が高く、一刻も早い解決が望まれる。また、現在までに様々な肝機能マーカーが見出され日常診療で広く用いられているものの、肝機能障害の原因が様々であり、例えば過剰な免疫反応の結果生じる拒絶反応なのか、反対に過剰免疫抑制による感染症なのかによって対応が大きく異なるが、現状これらを見分けることは困難である。そこで、急性拒絶反応を正確に予測、診断することが可能となれば、患者の予後は劇的に改善されると想定し、その分子生物学的指標の確立を目指した。
移植術後、タクロリムスの体内動態を変動させ得る遺伝的要因を考慮して投与量を調節しているにも関わらず、急性拒絶反応を来す症例が少なからず存在する。そこで、健常成人由来の移植肝における遺伝子発現量の違い、すなわち移植肝の体質が移植術後の拒絶反応の頻度・重症度に関連するという仮説を立てた。術直前の移植肝における遺伝子発現量を比較するため、800例を超える移植肝生検の中から、原疾患を胆道閉鎖症とする小児移植症例12例の検体を選択し、マイクロアレイを行った。その結果、経過良好群に比して急性拒絶反応群において2倍以上発現の高かった224遺伝子を急性拒絶反応発症に関与する候補分子とした。現在、抽出した分子のmRNA発現量をリアルタイムPCRにより測定するだけでなく、肝組織中におけるタンパク質発現を免疫染色法により確認し、再現性および予測性の妥当性評価を行っている。今後は、急性拒絶群において発現が亢進していることが明らかとなった分子に着目し、生体肝移植術後の急性拒絶を術前より予測、診断する分子生物学的指標を確立すること、さらにはその分子を標的とした新規治療法を開発することを目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り800例を超える移植肝生検の中から、原疾患を胆道閉鎖症とする小児移植症例のうち患者背景の類似する症例を抽出し、その検体を用いたマイクロアレイ解析を行った。経過良好群に比して急性拒絶反応群において2倍以上発現の高い224の遺伝子を抽出し、急性拒絶反応発症に関与する候補分子として検討を進めた。抽出した分子のmRNA発現量をリアルタイムPCRにより測定するだけでなく、肝組織中におけるタンパク質発現量を免疫染色法により確認し、再現性および予測性の妥当性評価を行っている。論文発表するに至っては居ないが、得られた研究成果を国内外の学会で発表し、学外の研究者とも積極的に議論した。また、本研究を進めるにあたり副次的に得られた結果について、実験指導した後輩と共に論文としてまとめ、誌上報告した。

今後の研究の推進方策

これまでに抽出した急性拒絶反応発症に関与する候補分子について、再現性および予測生に関する妥当性を評価するため、引き続きリアルタイムPCRによる検討を行う。また妥当性が評価された後には、拒絶反応発症との関連を明らかにするために、ラットin vivo実験を行う。肝臓移植モデルラットを用い、候補分子の特異的阻害薬や中和抗体あるいはsiRNAを導入することにより、急性拒絶反応の発症に与える影響を調べる。さらには、その阻害薬(抗体等を含む)を用いて急性拒絶反応発症の予防あるいは治療薬開発に向けた検討を進める。
本研究を通じて見出される遺伝子を標的としてデザインされた薬物が、新規の免疫抑制薬としての効果を示さない場合においても、当該遺伝子がアロ抗原(移植組織等)に対する強力な排除系の中心的な遺伝子であることに変わりはない。従って、新規の免疫抑制薬としての応用が困難な場合でも、当該遺伝子は急性拒絶反応を予測するリスクマーカー(危険因子)としての臨床応用は十分に期待できる。そこで、候補分子の発現レベルを指標に既存薬を中心とした適切な免疫療法レジメンについて、新規肝臓移植患者を対象に構築するという臨床研究を想定している。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Urinary neutrophil gelatinase-associated lipocalin: a useful biomarker for tacrolimus-induced acute kidney injury in liver transplant patients2014

    • 著者名/発表者名
      Tsuchimoto A*, Shinke H*, Uesugi M, Kikuchi M, Hashimoto E, Sato T, Ogura Y, Hata K, Fujimoto Y, Kaido T, Kishimoto J, Yanagita M, Matsubara K, Uemoto S, Masuda S.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 9 ページ: e110527

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0110527

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Impact of cytochrome P450 3A5 polymorphism in graft livers on the frequency of acute cellular rejection in living-donor liver transplantation.2014

    • 著者名/発表者名
      Uesugi M, Kikuchi M, Shinke H, Omura T, Yonezawa A, Matsubara K, Fujimoto Y, Okamoto S, Kaido T, Uemoto S, Masuda S.
    • 雑誌名

      Pharmacogenet Genomics

      巻: 24 ページ: 356-366

    • DOI

      10.1097

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Successful telaprevir treatment in combination of cyclosporine against recurrence of hepatitis C in the Japanese liver transplant patients.2014

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi M, Okuda Y, Ueda Y, Nishioka Y, Uesugi M, Hashimoto E, Takahashi T, Kawai T, Hashi S, Shinke H, Omura T, Yonezawa A, Ito T, Fujimoto Y, Kaido T, Chiba T, Uemoto S, Matsubara K, Masuda S.
    • 雑誌名

      Biol Pharm Bull.

      巻: 37 ページ: 417-423

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Conformational change in transfer RNA is an early indicator of acute cellular damage.2014

    • 著者名/発表者名
      Mishima E, Inoue C, Saigusa D 他33名中13番目
    • 雑誌名

      J Am Soc Nephrol.

      巻: 25 ページ: 2316-2326

    • DOI

      10.1681/ASN.2013091001

    • 査読あり
  • [学会発表] Gene expression analysis of tacrolimus-induced tubulointerstitial fibrosis after ischemia/reperfusion injury2014

    • 著者名/発表者名
      Haruka Shinke, Yuka Tamura, Shunsuke Fujita, Shunsaku Nakagawa, Takahisa Yano, Kazuo Matsubara, Satohiro Masuda
    • 学会等名
      47th ASN Kidney Week 2014 Annual Meeting
    • 発表場所
      Philadelphia, United States
    • 年月日
      2014-11-11 – 2014-11-16
  • [学会発表] 肝臓移植後の慢性腎臓病発症と尿中WAP four-disulfide core domain protein 2漏出量との関連2014

    • 著者名/発表者名
      新家遥、上杉美和、中川俊作、藤本康弘、海道利実、柳田素子、松原和夫、上本伸二、増田智先
    • 学会等名
      第57回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-07-04 – 2014-07-06
  • [学会発表] 尿細管上皮細胞障害並びに間質の線維化を反映する候補因子の探索2014

    • 著者名/発表者名
      新家遥、中川俊作、宮田仁美、冨田恵里、松原雄、柳田素子、松原和夫、増田智先
    • 学会等名
      第57回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-07-04 – 2014-07-06

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公開日: 2016-06-01  

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