研究課題/領域番号 |
14J07879
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 由佳 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ペプチド / 金属錯体 / 鉄イオン |
研究実績の概要 |
金属-ペプチド錯体は、高い水溶性やペプチド主鎖間の水素結合により適度に固定化された母骨格を持つことから、一般的な金属-有機分子錯体にはみられない特徴を有する反応触媒や生体内金属トレーサーなどの様々な機能性分子への応用が期待される。本研究では、固相ペプチド合成を用いて効率的に金属-ペプチド錯体ライブラリーを構築することで、機能性分子の創製を目指している。 研究代表者は本年度の研究で、新規二座配位性アミノ酸ユニットとして、位置異性体である2つのピリジニルトリアゾリル型アミノ酸ユニットを設計した。本ユニットは市販のアミノ酸誘導体から6工程および3工程と短工程で合成可能であり、固相ペプチド合成に適用可能であった。続いて、得られたピリジニルトリアゾリル型アミノ酸含有ペプチドについて鉄(II)イオンに対する配位性の評価を行った。2つのピリジニルトリアゾリル型アミノ酸それぞれを含むペプチドを比較したところ、一方のピリジニルトリアゾリル型アミノ酸含有ペプチドでのみ鉄(II)イオン-ペプチド錯体形成が確認された。このことから、ピリジニルトリアゾール基の置換位置は金属イオン配位性に大きな差をもたらすことが明らかとなった。さらに、いくつかの類縁ペプチドを合成し、分光学的手法を用いて比較することで、安定な鉄(II)イオン-ペプチド錯体を形成するために適当なアミノ酸配列、ペプチド骨格および側鎖長に関する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、新規二座配位性アミノ酸ユニットであるピリジニルトリアゾリル型アミノ酸ユニットの合成経路を確立し、固相ペプチド合成に応用できることを確認した。さらに、本ユニットを導入したペプチドが鉄(II)イオンおよびルテニウム(II)イオンと錯体を形成することを明らかにした。この結果は、金属配位性ペプチドの構造ユニットとして本ユニットが有用であることを示しており、目的としているペプチドライブラリー構築へ発展できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
ピリジニルトリアゾリル型アミノ酸含有ペプチドの鉄(II)イオン錯体は比較的安定であるものの、酸性条件下などでは錯体を形成しない。一方で、錯体の更なる構造情報を得るためには、より安定な錯体を形成する必要がある。そこで、ピリジニルトリアゾール基に代わるより配位性の高い配位子を有するアミノ酸ユニットを設計し、得られる金属錯体の構造情報を取得する予定である。
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