研究課題
金属配位性ペプチドは、高い水溶性や主鎖間の水素結合により適度に固定化された骨格など他の有機分子配位子とは異なる性質を持ち合わせている。また、固相合成に適用可能な金属配位性アミノ酸ユニットを設計することにより、種々の誘導体を効率的に合成し、金属配位性ペプチドライブラリーの構築が可能である。これまでに、新規金属配位性アミノ酸としてピリジニルトリアゾール型アミノ酸ユニットを組み込んだペプチドの鉄(II)錯体においてペプチド母骨格の違いが金属中心不斉に与える影響を精査してきた。今年度は、錯体の構造解析を目的として、より安定な金属錯体が得られると期待される類似の二座配位子である2,2'-ビピリジンを側鎖に有するアミノ酸の合成を行った。ビピリジン型アミノ酸の合成法は、酵素による光学分割法が報告されているが、今回はキラルな酸を用いたジアステレオマー塩形成による光学分割を含む新たな合成経路を確立した。本アミノ酸を用いてペプチド母骨格の異なるビピリジル型アミノ酸含有ペプチドを合成し、分光学的手法を用いて構造解析を行い、ビピリジン型ペプチドの鉄(II)錯体とピリジニルトリアゾール型ペプチドの鉄(II)錯体の金属中心不斉の違いを明らかにした。さらに、反応性触媒への応用を指向し、他の金属種での錯体形成を検討した。
2: おおむね順調に進展している
固相合成に適応可能な2,2'-ビピリジン型アミノ酸ユニットのジアステレオマー塩形成による光学分割を含む新たな合成経路を確立した。得られたビピリジン型アミノ酸含有ペプチドの鉄(II)錯体の構造解析を行い、ピリジニルトリアゾール型アミノ酸含有ペプチドとの比較を完了した。ビピリジンは各種金属の配位子としても汎用されてることから、引き続きペプチド性リガンドとしての応用について精査を進めることで、目的の研究成果が得られると想定される。
合成法を確立した配位性アミノ酸に加え、市販品として入手可能な単座または二座、三座配位性アミノ酸を用いて金属配位性ペプチドライブラリを構築する。得られた金属-ペプチド錯体は反応性触媒等への応用を検討する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Journal of Medicinal Chemistry
巻: 58 ページ: 5218-5225
10.1021/acs.jmedchem.5b00216