研究課題/領域番号 |
14J07927
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
張 承姫 関西学院大学, 言語コミュニケーション文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 会話分析 / ほめ / ほめの応答 / 初対面会話 / 日韓対照研究 |
研究実績の概要 |
平成26年度研究実績は以下の三点である。 第一に、データの数を増やすためデータ収集を行った。本研究で用いる会話分析は質的分析であるため、データの数が少ないと指摘されている。そこで、データの数を増やして分析の説得力を高めるように、以下のようにデータ収録を計画し実施した。①2014年10月から2014年11月にかけて週一回か二回の頻度で、研究室で行なわれる自然会話を収録した。データは、一日5時間程度で6回行ったので、総30時間程度のデータ量が収集できた。他方、②学校内の生協の方々に協力していただき、店頭で店員と学生のやり取りを収録した。このデータは指導教員である森本郁代先生との共同研究として、今後分析を行う予定である。 第二に、会話分析の技能を習得することを目標とし、会話分析の最も大きな国際学会であるICCAに参加し、最近の会話分析の動向や情報を得た。また、会話分析図書や論文を読み、会話分析の知識を得た。 第三に、この1年間の研究成果を、社会言語科学会誌や関西学院大学紀要などに論文を投稿し研究報告を行った。研究にあたって今年度最も焦点を当てたのは、「ほめ」と「ほめの応答」について明らかにすることであった。①社会言語科学会誌で報告した内容は、ほめの発話の特徴によってほめの応答が「同意」「不同意」のようにそれぞれ異なってくることを明らかにした上で、ほめられた側が自画自賛を回避するため、ポジティブな評価の対象を別の側面にずらして応答するやり方を示した。そして、現在分析を進めているのは、②ほめの発話の直後で「そうですか?」「そう?」などの応答が行われていることに注目し、なぜこのような応答を用いるのかという点である。学会で報告した内容やコメントなどを踏まえた上で、平成27年度は論文を執筆する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画以上に進展しているとした理由は以下のとおりである。 一点目は、計画以上にデータ収集することができたからである。研究協力者のおかげで自然会話のデータを30時間以上収集することができた。それによって、これまでのほめの研究でまだ不明確であったことが、日常会話を会話分析の手法で分析することによって新たな見解を示すことができると期待できる。 二点目は、様々な学会に参加し、現在の研究成果を報告することができたからである。とくに、平成26年度は、査読付きの論文2本が掲載されたが、このことは本研究の意義があるものとして認められたからであると考えられる。そして、学会発表も積極的に参加し、平成26年度は3回発表した。これらの内容や指摘、コメントを踏まえ、平成27年中には学会誌に論文を投稿する予定である。 最後に、海外や東京、北海道で開催された会話分析セミナーに積極的に参加し、知識だけではなく、実際の技能を習得できるように努力したからである。とくに、海外の学会などに参加して最近の研究の動向を調査することができたので、そのような意味でも平成26年度は多様な観点から分析を進めるきっかけになった一年だったと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の計画は以下のとおりである。 第一に、平成26年度に収録したデータを文字化し、分析を進めることである。 第二に、韓国語のデータの分析を進め、日本語のデータを比較することである。 第三に、海外学会に参加し、最近の研究の動向について調査することである。 第四に、韓国の学会や、日本の学会で報告を行うことである。とくに、平成27年度は、日本の学会誌と韓国の学会誌に投稿する予定である。 本研究によって「ほめ」という行為がどのような機能を持っているのか、ほめの応答はどのようなものを用いるのかなどが解明されつつある。「ほめ」という行為は相手の気持ちをよくさせ、コミュニケーションを円滑にする働きがあるので、お互いに誤解や摩擦が生じないように、より具体的な様相を明らかにする必要がある。本研究では質的研究である会話分析を採用し、より詳細な検討を行うことによって、韓国人日本語学習者が、自身の母語におけるほめと、日本語母語話者によるほめとの共通点と相違点をより適切に理解し、日本語母語話者と良好な関係を築く一助となると予想される。
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