研究課題/領域番号 |
14J07936
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長沼 史登 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | モノアミン系神経伝達物質 / モノアミントランスポーター / アストロサイト / PMAT |
研究実績の概要 |
近年ニューロンの支持細胞であるアストロサイトが、シナプス間隙におけるセロトニンなどのモノアミン系神経伝達物質の濃度調節に関与していることが分かってきたが、そのメカニズムは不明なままであった。本研究では、初代培養細胞ヒトアストロサイトおよび、ヒトアストロサイトーマ由来細胞株1321N1にてモノアミンの取り込み実験を行った。その結果、新規モノアミントランスポーターであるPlasma membrane monoamine transporter (以下PMAT) がアストロサイトにおけるセロトニン、ドパミン、ノルエピネフリン、ヒスタミンの取り込みに重要な役割を果たしていることを明らかとした。次に、生体におけるPMATの重要性についてマウスを用いたin vivoの系で明らかにしたいと考えた。そこでまず、これまで明確にされていなかったマウスPmatの輸送能の評価を行い、既報のヒトPMATの輸送能と比較検討を行った。その結果、マウスPmatはヒトPMATと同様に高いモノアミン輸送能を持ち、イミプラミンやdecynium22により阻害されることが明らかとなった。次に、セロトニントランスポーターなどの基質選択性が高いモノアミントランスポーターと、PMATの発現をマウスの各脳部位において、定量PCR法を用いて比較した。その結果、ほとんどすべての脳の部位においてPMATが基質選択性の高いトランスポーターに比べ、非常に多く発現していることが明らかになった。最後に、イミプラミンをマウスに投与し、マイクロダイアリシス法を用いて細胞外液中のモノアミン量を測定すると、control群に比べ、薬物投与群において細胞外のモノアミン量が上昇する事が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いたin vitroの実験系において、アストロサイトにおけるモノアミン取り込みにPMATが重要な役割を果たしていることを十分に示す事が出来た。次に、マウスPmatが高いモノアミン輸送能を持つ事および、脳内で広範囲に非常に多く発現していることが明らかとなった。これに加え、阻害剤とマイクロダイアリシス法を用いる事で細胞外モノアミンクリアランスにおけるPMATの重要性を示すデータも得る事が出来た。現在本研究では、PMATノックアウトマウスを作製しており、P1へテロマウスを得ている。
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今後の研究の推進方策 |
PMATノックアウトマウスを作成中であり、現在P1ヘテロマウスを得た。今後交配を重ね、必要数が確保され次第表現型の解析を行う予定である。具体的には、PMAT欠損により、ノックアウトマウスでは、脳内モノアミン量が上昇することが予想される。それを脳ホモジネートサンプルおよびマイクロダイアリシス法により検討する。次に、脳内モノアミン量の上昇から、モノアミン神経系の活動亢進を介した表現型の変化が予想される。そのため、行動薬理学的手法によりその表現型の解析を行う。これにより、モノアミンクリアランスにおけるPMATの重要性をより詳細に明らかにすることで、精神疾患に対して新たな視点や新規治療ターゲットとしての可能性を提供したいと考えている。 さらにこのPMATノックアウトマウスは、PMAT遺伝子内にloxP siteを有しており、アストロサイト特異的にCre-recombinaseが発現するGFAP-creと交配させる事で、アストロサイト特異的にPMATを欠損させることが可能である。将来的にはこちらも同様に解析することでアストロサイト発現するPMATの重要性をより明らかにしたいと考えている。
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