研究実績の概要 |
本研究は、昭和戦前期から戦後復興期までを考察対象に、国内外の美術展や博覧会の展示空間に表された国家表象の系譜を捉えることを目的とする。平成28年度は、1930年代後半に欧米で開催された日本美術展について、これまでの研究成果を発表したほか、戦後の事例として1964年東京オリンピックと芸術の関連について考察した。 まず、1936年ボストン開催の日本古美術展について、米国で追加調査を行った。この成果をまとめた論文「展示空間から見るボストン日本古美術展覧会〔1936年〕」は、2016年12月刊行の『近代画説』25号に掲載された。 2016年6月には、米国アジア学会のアジア大会「AAS-in-Asia Kyoto」において、パネル「Empires in Motion: Japan and 1930s Art Exhibitions on the Global Stage」に参加し、1939年ベルリン日本古美術展における展示空間に関する口頭発表「Display of Partnership: Installation Strategies of the Old Japanese Art Exhibition in Berlin, 1939」を行った。活発な議論により、1930年代の美術展や博覧会における「帝国」日本のパフォーマンスを多角的に検討することができた。 さらに戦後の美術と国家表象について考察するなかで、1964年東京オリンピックの重要性を認識した。学術誌『現代スポーツ評論』において、映画作品「東京オリンピック」を題材にオリンピックにおける芸術の役割について論じる機会を得た。また、同大会に合わせて開催された日本美術の展覧会についても調査を進めた。近年、日本のオリンピック文化を見直す機運も高まっており、展示空間と国家表象の問題としてオリンピックを論じることの意義が明確となった。
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