研究課題
陸生高等植物の葉の表皮に存在する気孔は多くの植物微生物の侵入経路となっている。微生物の侵入を阻害するために、孔辺細胞は微生物由来エリシターを認識し、気孔が閉じる。気孔閉口にはカルシウム依存的な経路は重要である。本研究は、エリシターによって誘導される孔辺細胞内カルシウムシグナル伝達ネットワークの解明を目的とした。これまでに、申請者は酵母エリシターによる気孔閉口に重要であるカルシウム依存性キナーゼCPK6を同定した。孔辺細胞において、CPK6は酵母エリシターによるH2O2の蓄積、細胞質カルシウム濃度の上昇、カルシウム透過性チャネンルとS型アニオンチャネルの活性化と内向きカリウムチャネンルの阻害を正に制御する。しかし、これらの制御の詳細について不明の点が多い。以前の研究は活性カルボニル種はH2O2の下流因子であることを示唆した。本年度は、内向きカリウムチャネンルにおける活性カルボニル種の一種であるacroleinの影響を調べた。結果、acroleinは孔辺細胞の内向きカリウムチャネンル活性を阻害した。この結果は、酵母エリシターが活性カルボニル種を介して内向きカリウムチャネンルを阻害することを示唆する。CPK6と協調的に気孔閉口を制御する可能性があるためにカルシウム非依存性キナーゼOST1は注目されている。本年度の成果として、OST1は酵母エリシターによる気孔閉口を正に制御することを解明した。孔辺細胞において、OST1は酵母エリシターによるS型アニオンチャネルの活性化に重要であるが、H2O2の蓄積、細胞質カルシウム濃度の上昇、カルシウム透過性チャネンルに影響しない。一方で、酵母エリシターは孔辺細胞のOST1キナーゼ活性に影響しない。これらの結果から、恒常的な活性を持つOST1を介するカルシウム非依存的な経路は酵母エリシターによる気孔閉口重要であることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
酵母エリシターによる気孔閉口を制御するカルシウム依存性タンパク質キナーゼCPK6とカルシウム非依存性タンパク質キナーゼOST1を同定しました。
現在、研究は順調に進行していることから、特に特別な推進方策をとる予定はない。
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