現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展していると考える。 とりわけ、哲学研究をふまえつつ事例研究に着手できたことが大きな進展であると言える。というのも、学習概念の研究基盤をより学際的な形で強固にできたと思われるからである。 本研究で軸となる学習概念は教育学においてはプラトンの想起説に始まるが、20世紀以降その定義付けや分析は心理学や認知科学的知見に負うところが大きい(E. L. Thorndike, B. F. Skinner, N. Chomsky等)。本研究はドゥルーズの哲学を手がかりに教育思想史における学習概念の変遷を明らかにすることはもちろんのこと、事例研究に応用することで、心理学や認知科学の知見との応答を行っている。この意味で本研究は学習概念研究の総体に哲学的・思想史的知見でもって貢献していると言える。 十分に満足に行えなかった課題としては、翻訳作業(重要なドゥルーズ研究の二次文献であるものの未邦訳であるCharbonnier(2009)など)と資料蒐集であり、来年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
以下の項目について研究する予定である。 ・主知主義の調査としてライプニッツとスピノザの哲学を分析する。具体的には彼の認識論(Nouveaux essais sur l’entendement humain, 1765)を中心に読解し彼の自由意志批判について整理する。さらにドゥルーズのライプニッツ論(Le Pli: Leibnitz et le Baroque, 1988)との比較検討を行う。また、スピノザの学習論(Tractatus de Intellectus Emendatione, 1662)を読解し、彼が学習における身体の役割をどのように考えていたかを抽出したのち、それが主著(Ethica Ordine Geometrico Demonstrata, 1677)においてどのように体系化されたのかを追跡する。さらにドゥルーズのスピノザ論(Spinoza et le probleme de l’expression, 1968, Spinoza, philosophie pratique, 1970)との比較検討を行う。 ・認識論的切断の調査としてバシュラールとアルチュセールの哲学を分析する。彼らの主著(それぞれLa Formation de l’esprit scientifique, 1938とPour Marx, 1965)を中心に読解し、認識論的切断が発生する条件についてまとめ、ドゥルーズがガタリと行った資本主義批判論と比較検討する。 ・これまでの三年間の成果の取りまとめとして、学習概念の観念史を綜合し、ドゥルーズの哲学における学習概念の思想的展開の把握と教育学的意味を提示しうる博士論文を執筆する。それを東京大学に提出する。
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